2007.03.07

短編小説:ふみきり

『式王子港市における埋葬法』
 明治維新政府によって、神道派の反発を考慮にいれた太政官布告による火葬禁止令が徹底され仏教色の払拭がなされる前も、都市部生活圏の場所問題により、火葬が復活し、それが主となる後にいたっても、式王子港市では土葬の風習が色濃く残っていた。
 木枠の桶に、遺骸と共に土地神への供物を奉納品として共に埋めた。奉納品を受け取った神はその礼として遺骸に精を吹き込み、その頬に朱を差させては生前の姿を纏わせ、現世に還すという。実際に土葬である場合に、土の精気を受け仮死状態であるものが息を吹き返すという現象が少なからずあった。このことが宗教的意味合いを強め、火葬よりも土葬のほうを尊ぶようになったのであろう。……参考事例……「屍解鬼」
 
『屍解鬼』
 墓場などの地下に群棲し、遺骸を攫って喰らうといわれる鬼。畜生面で護謨状の皮膚をして、前かがみに飛び跳ねるように二足歩行するという。
 御囃子宮の社殿にはまことしやかに「屍解鬼の腕」と伝わりし怪しげなる物が奉納されている。一見したところ、霊長目の腕に見えるが、劣化した護謨に似た形状も併せ持ち、いい伝えの容姿に遵えば屍解鬼は存在している物証となるやもしれぬ。写真は別紙参照。レントゲン検査及び体細胞の採集は許可されず、科学的検証はない。
 かつて、義歯やかつら用の毛髪狙いの墓荒らし、果ては解剖学研究の学徒らが生体の手っ取り早い調達方法として死体を盗むことがしばしば横行した。それらの姿が鬼気めいて伝聞されたとしても納得のいく話である。
 付記しておく事例として当時のカストリ新聞に「カクモ衆生驚クベキカナ。桶ノ底抜ケタル当ニ其ノ下、凍エル冷気息吹ク果無シ穴在リ」とされている。
 尚、更に追記のこと。米国、アーカムにあるミスカトニック大学での研究資料として「食屍鬼」と「夢想國」や「成り変わり」についての言及があるが、民俗学的見地からの関連性は未だ見出されていない。
 
 *
 
「ふむふむふむふむ」
 横でふむふむいいながらシャーペンでがりがりノートにメモしている生き物を僕はぼんやりと眺めていた。生き物の手元には『式王子港郷土史』なる分厚い黄ばんだ書籍が仰々しく鎮座なさっておられる。この、一種亜空間めいた空気に耐えられる中学生が、式王子大学付属中学校に「もし」存在するとしたら僕だけだろうと自負できる。
 先ほどから隣に座っているヘンチクリンが一生懸命に何をしているかというと、飾らずにいえば死体の研究だ。いやちがうか。死体に伴う何かの学究だ。それか……或は単に死体が好きなだけかもしれない。まさか、そんな僕じゃあるまいし。
 そんな僕はといえば、今やレア本である『SFバカ本』に収録されている「演歌黙示録」を読んでいた。牧野修氏の傑作だ。演歌と神秘学についての繋がりから世界滅亡への道を描くというトンデモだが、こんなトンデモ小説が大好きである。図書館であることを考慮して笑いをこらえるが、それでも時折こみ上げてくるものは抑えきれない。ぷぷ。
 隣のギガガントマギカディアボロスが僕の笑い声に反応してジト目でこちらを見た。グワリッと顎を広げ威嚇している。僕も負けじと手元のノートを覗き込んでやる。「成り変わりと都市伝説の関連性とは?」としゃちほこばった字で書いてある。両手でノートを覆い隠すようにして「何よぅ」と珍獣が今更恥ずかしがってる。
「お気に召すなら『オールカラー解剖学図典』でもお持ちいたしましょうか。無修正で胴体輪切りの連続写真が載ってる奴」
 シャアーッとまたもや人間てこんな口開くのかってぐらいの全開で威嚇。
「そろそろ時間だからさ」
 館内にドヴォルザークの新世界が流れている。閉館の時間が近い。
「おす。了解ー」
 チンチラの仔猫のように無邪気に飛び跳ねながら少女は『式王子港郷土史』を禁帯出の棚に返しにいった。禁帯出図書なんて読んでたのか……。
 
 *
 
「おまた……せ」
 あいつは図書カウンターで司書のおねーさんと話してる……。
「翔さーん」
「こら、チーちゃん。木津さんっていいなさい」カウンター内のおねーさんが片眉をきゅっと上げる。
「はい。木津おねーさん」
「よろしい。千尋くん」
「で、で?」あいつの目がきらきらしてる。こんな目をするのは理由がある。ちゃんと分かってるんだ。だけど。
「ミッションコンプリーツ!」眼鏡がキラリンと光る。親指をグイッと上に向けた拳を突き出す木津さん。木津さんは司書のアルバイトをしていて、あいつとは顔馴染みだ。というか馴染みすぎちゃってるから困る。
「テリー・ビッスンの『ふたりジャネット』とラファティの『宇宙舟歌』!」あいつが感激した雄たけびを上げながら、木津さんの両手を握ってブンブン振ってる。木津さんもこらーとはいいながらも嫌な顔を見せることはない。
 不健全だ。ビッスンやラファティの面白さはあたしにだって分かる。でも二人はそれ以外に血に淫するがためのクライヴ・バーカーの『ゴーストモーテル』やインモラルな『SFバカ本』なんてのをを式王子港市立図書館にせっせと納入しているのだ。学究の徒であるべきこの場であたしと違ってあの二人は書物に淫らがましい空気を持ち込んでる。不健全、不健全だ。
 それに……肩にややかかる程まで伸びた黒髪、知的なノンフレームの眼鏡。清潔な白のブラウス。香るか香らないかな程度の香水。いかにも女の子。木津さんはあたしが五年の年齢差を補っても追いつけない女の子をしてる。それをあいつがかまう。
 不健全だ……どっちが? 
 図書館に不健全な本があるのがいけないのか、それとも木津さんが不健全なのか。前者は多分、そうだ。でも後者は……きっとあたしが不健全なんだ。
「お、翔さん、いい色のブローチ付けてるね」
「む、目ざといなぁ。スワロフスキーなんだけどね。アメジストの葡萄」
「さすが似合います。ところで読みたい本があるんだけど?」
「おねーさん、いつか誉め殺されそう」
 こんな二人ならいつかミスカトニック大学から『ネクロノミコン』の写本だって手に入れちゃいそうだ。あたしはなんだか脱力してしまう。
 
 *
 
「で、調べ物はうまくできた?」
 三月の足音はすぐそこまで来ているが、五時過ぎはまだ寒い。千尋はハーフコートに手を突っ込んで歩いている。
「邪魔されなきゃもっと進んだかもね」毬華が口をとがらす。毬華は千尋のことを邪魔だなんて産まれてこの方、一度も思ったことはない。先ほどのもやもや感が残ってて、憎まれ口を叩いているだけだ。  
「そっか。悪い」
「いつものことだ。気にすんない」ばんばんと毬華が千尋の背中を叩く。その度に毬華の猫ッ毛なショートヘアが揺れ、千尋の鼻先に仄かな牛乳石鹸の香りが漂う。
「今晩、どうする? お前ん家たしか」
「ん、そうさな。ゴチになりますかなぁ」
 海淵侍毬華と長谷川千尋はいわゆる「お隣さん」である。十年ほど前とはいえ一緒に風呂も入ったことのある仲だ。海淵侍家の両親は共に民俗学者であり、フィールドワークで国内外を問わず駆け回っている。そのためよく家を空けており、そんな時毬華は隣家である長谷川家にご飯を食べに来るのだった。用心も兼ねて千尋の両親は千尋の姉の部屋を貸そうと申し出ている、そんな話を千尋は聞いていた。
「今晩エビフライだってさ。甲殻類サマサマ」
「じゃあ尻尾あげる」
「お、気が利いてるなぁ。どした」エビの尻尾やホタルイカの眼球なんて妙な物が好物なのを知ってるのは学校じゃあたしだけだな、毬華は心の中で笑った。
「どうもしない。そうそう調べ物といえば、こんな都市伝説があって」
 毬華がノートを開ける。空に陽のほむらはかろうじて踏みとどまっている。千尋はメモを覗き込んだ。
 
『屍解鬼の踏切』
 全国各地に設置されている踏切のうち、幾つかは魔の踏切と呼ばれ、何故か事故が多発するところがある。しかし、綿密なる調査に関わらず、計器の故障や経年劣化による誤作動も人為的ミスも見出せなかった。原因究明の結果、とある民俗学者が「地域性」を挙げた。その地域がかつて土葬が盛んであったことに。「それ」を食料としていた屍解鬼が獲物を仕掛ける罠を編み出した。死食性であり、臆病である屍解鬼は自らが狩をすることはなく、その道具立てとして列車を選んだ。歩行者を幻惑させあたかも信号に異常がないと錯覚させて踏切を渡らせる。そうして手にした「獲物」を巣穴に持ち帰り食すのだと。
 線路に事故の痕跡が残っている。千切れた衣服や所持品など。列車にも何かを轢いた痕跡が残っている。しかし、遺骸は見つからない……。
 
「そんなの調べてたのか。それでよく人のこと悪趣味とかゆーよな」
「それは違う。あんたのは悪趣味。あたしはフィールドワーク」
 バチバチと見えない火花が散る。
 目の前の踏切がカンカン音を立てている。
 毬華の視線が何かを捕らえたかのように座っている。その視線の先、千尋は線路沿いの盛り土に幾人もの影が躍るのを幻視した。
「ねえ」
「なんだよ」
「あたしがいなくなってもケータイのメモリ消さないでね」
「なんでそんなこと」
「甲殻類一匹あげるから」
「わーかったからそんなこというな。消すわけないだろ」
 毬華がうん、と笑ってそれじゃあ、お風呂入ったら行くから勝手にめしすんなーと千尋を置いて一人駆け出した。
 踏切の自動遮断機はとっくに上がっており、千尋の横を車や学生や自転車やらが通り過ぎてゆく。
「ニューヨークの地下鉄でもそんな話あったよなたしか」
 千尋は盛り土にもう一度目を向けた。なにも異常なものなどありはしなかった。
 
 *   

 夕飯はエビフライに大根おろし添えハンバーグ。ネギダク納豆にナメコのお味噌汁。
 それに河内ワインの赤。あたしらが十五歳だってことを長谷川パパママは気にもしていない。あたしはグラスに一杯だけ注いでもらい、火を扱うように慎重に飲み込んだ。マスカットベリーAの芳醇な香りが口いっぱい鼻いっぱいに広がり胸が熱くなる。辛い。千尋のおねーさん好みの味。
 千尋はといえば食後、そのおねーさんとケータイで話し込んでる。しぶしぶといった表情だが、遠慮なく軽口を叩いているから嫌じゃないんだろうな。あいつ、エビフライを約束どおりに一尾皿に放り込んでやったら、代わりに付け合せの人参甘煮をあたしの皿にぽいぽい投げ入れる。辛党なのは知ってるので黙って食ってやった。
「比奈子おねーさんなんだって?」
「ああ、今河内に行ってるらしい。ワイン館があって片端から試飲してやったって豪語してた。どんな肝臓してんだか。いかんぞう」
 一発どつく。
 千尋はニコニコしてる。ツッコミがあることに嬉しがってるのだ。ったくもう。
「さて、腹ごなしにいっちょ指南してやるか、ホレ」
 千尋は自分の部屋にあたしを引っ張り込み、ゲーム機のコントローラーを寄越し、ゲームロムをセットし、あたしがあ、も、う、もいわないうちに始めてしまった。
 『怪物狩猟者』は千尋がマイブームにしているアクションゲームだ。主人公は狩猟者となって出てくる怪物を得意の武器で退治しオンラインで全国ランクも出るという極めし者のためのゲームだといってる。全国でも上位ランカーに入っているらしく、要はあたしに自慢したいのだ。お子様め。
 
 *
 
 緑の藪深い獣道。視界が狭く、しかし獣の息遣いだけが聞こえる。
 走り回る地響き。砂煙。
 あたしは跳躍して岩陰に身を潜める。自分の息遣いも荒くなっている。
 苔色のいぼに鎧われた毛むくじゃらの鼻面が地面を蹄が蹴る音。
 大剣を横に薙ぐ。止まらない。一転して体勢を立て直し、視界を回転させる。
 奴は……目の前にいた……剣先を正眼に構え、突撃。
 
 *

「お前ぃ、セブンセンシズはないのか」
「そんなもんないわよっ」
 あたしのキャラ、マリカは地面に倒れ臥し、いぼいのししに踏まれまくっていた。
「ヴェルッカボアーは別名『猪神サマ』と呼称される序盤、いやある種このゲームで最凶を誇られるモンスターなんだ。その首の上に付いてるモンをうまく使え、アホ」
 千尋が深狭鬼と名付けた、黒髪長髪の女剣士を選択する。武器は同じく大剣。
「見てろ」ぺろりと舌を出し上唇を舐めた。
 先ほどのシチュエーションに遭遇する。細い獣道に三体のヴェルッカボアー。
「要するに、あれはお前だ。もしくはうちのねーちゃんだ」
 突進してくる三体をまともに相手せず、側面から動きの止まったところを狙い打ちに大剣を上段から打ち振るう。一撃では沈まない。すぐさま深狭鬼はヴェルッカボアーから離れ、突進を待ち、剣を構える。動きが止まる。打ち込む。それの繰り返し。
 ものの二分で三体のヴェルッカボアーは地に沈み、深狭鬼は悠悠とハンターナイフで皮革を剥いでいる。ファンファーレが鳴り響く。
「な、正面から猪突猛進してくる相手なんて簡た……ん」
 誰が猪突猛進だっ。鉄拳を千尋のテンプルにめり込ませる。あたしは最後まで台詞をいわせなかった。千尋はコントローラーを握り締めてあたしのひざに倒れ臥した。
 トクンと鼓動が跳ねる。ごろんとひざの上で転がり千尋が顔を上に向けた。あたしが先に帰ったのはシャンプーを買いに行くため。牛乳石鹸は卒業したんだ。
「ごめんな」
「え」
 収まれ、心臓。シャンプーを変えたのに気付いてくれたんだろうか。木津さんのブローチに目が行ったみたいに。千尋との距離が近過ぎる。鼓動がばれる……。
「猪なんてごめん。毬華きっとギガガントマギカディアボロスの化身だよ」
 ゴス。あたしのひじが鼻柱を直撃した。
「てんめー、そんなお前にはなー」
 鼻を押さえながらポケットに手をやり探っている。頭はあたしのひざの上のまま。
「これをやる」
 にゅっと突き出た拳。開いたてのひらの中には小さなピンバッヂがあった。
 窒息状態。いわゆるチアノーゼで紫になっている悪趣味に戯画化された顔が房になって連なっている。葡萄?
「さっき飲んだろ? ねーちゃんがワインと一緒に送ってきたんだ。さすが姉弟だけのことはある」
 豪放磊落というか、比奈子おねーさんは弟の趣味を許せるくらいに器が大きい。というか完全なブラコンで千尋は苦りきってる。そして体裁気にせず活発すぎるあたしの中におねーさんの姿が重なるらしい。つまり「おんな」を意識しないのだ。
「おんなじもん持ってるから毬華にってことだろ、きっと」
 もう一度手をポケットに突っ込み取り出したそこには表情は異なるものの同系統の悪趣味なバッヂがあった。
「はは……ははは」
 いつのまにか泣いていた。千尋の顔に涙が落ちる。ひと雫、ふた雫。
 千尋の気持ちは真っ直ぐで嬉しい。照れも無く猫のように平気でじゃれあってくる。でも、そんなこいつのあたしを見る瞳の中におんなはいない。悲しいがいつの頃からか分かってしまった。
 精いっぱい伸ばした手で千尋があたしの頭を抱える。てのひらが髪の毛をくしゃりとかき回す。困った表情であたしを見上げてる。
 十五年も一緒にいれば何でも見えてくる。見たくない。でも背けられない。
 例えば、木津さんのようにあたしが守ってやりたいくらい脆弱で清楚でおしとやかで愛らしい女性が好みなのだ。同族嫌悪といえば失礼だけど、比奈子おねーさんの性格に加えてとち狂ったほどの溢れんばかりの愛情に千尋は免疫を持ってしまった。
 フィールドワークで泥んこになっても気にしないような幼馴染は姉と一緒にしか見えないに決まってる。だからひざ枕にもシャンプーにも反応しやしない。
 確証が掴めたら、あたしはあたしを脱ぎ捨ててこいつの前に現れてやる。
 もう平気な澄ました瞳なんかであたしを凝視なんかさせてやらない。
 
 *
 
『成り変わり』
 「屍解鬼」と、欧米で風聞される「屍食鬼」には共通点が数多見受けられる。地下に群棲し、死食性であるのは周知のこと、最たる特筆すべき特徴が成り変わりであろう。
 対象物である屍骸が人間である場合、その者の大脳、小脳、脳幹を含むいわゆる脳と、心臓部を喰らうことにより、その者自体に化生するといわれる。外見はいわずもがな、その者の記憶の細部にいたるまで、特徴は異なる点を見出せない。しばしば文献で完全に死亡を確認された遺骸が納骨堂や土饅頭に隠された木桶の中から消失し、変わらぬ生前の姿をまとって戻ってくる事例の報告がある。日本での研究報告は皆無であるが、海外の研究資料により、民俗学的同意性を補完することにいささかも臆するべきではない。
    
 *
 
 あの晩、流した涙のわけを毬華は教えてくれなかった。
 あれから、独りの家に帰った後、次の日の朝にはもぬけの殻だったからだ。
 両親に似て、放浪癖というか、毬華は学校すらサボってふらりと旅行に行くことが以前にもあった。問題児極まりない。帰ってきたら土産話というか、下手すると一昼夜に飽き足らず延々と都市伝説やら云々喋ってる。つまり、根は僕と変わるところがない。立つ位置が違うだけで。
 数日前、毬華と図書館からの帰り道に通った踏切で事故があった。
 事故現場には式王子大学付属中学校の制服と鑑定された布切れが落ちていた。というよりも布切れがあったから事故、事件性が示唆されただけで。
 なぜって。毬華以外、一人も生徒が欠けていないからだ。
 その毬華からは相変わらずメールが届く。たわいもない内容のメールばかり。抹茶屋の牛飯で初めてネギダクに挑戦してみたとか。事件を秘匿するために毬華を装っているならよほど才知に長けた奴だろう。毬華の友人ということで警察署に呼ばれたが、こんなアホなメールを寄越すのは毬華本人以外百パーセントありえない。
 ありえないということは毬華の身に何かあったわけじゃない。
 変わったことが一つだけある。
 あの翌日から今日まで僕は毎日終業時間まで図書館に通っている。毬華がいつでも戻れる場所を用意しておくために。
 そんな僕の生活を狂わすひと。
「お隣、座ってもよろしいでしょうか。あたくし」
 紀伊國由芽。僕と同学年で隣のクラス。生徒会副会長を務めるお嬢様。
 ほっそりした面立ちに流麗な立ち居振る舞い。どこまでも柔らかな口調。腰まで届く艶やかな黒髪。
 僕は彼女を勿論知っている。遡れば入学式当時から一目惚れの女の子。しかし彼女との接点はこれまでない。この図書館で見かけたことすらない。
 打てば響く。彼女はどこまでも僕の話題について来た。数日の間にあたかも以前からの「半身」であったかのように寄り添って座っている。
 居心地悪い違和感の中に僕はいる。本来、隣の席には毬華が座ってふむふむと呆れるほどの本の虫になり古書籍に齧りついてたはずなのに。横を向くと紀伊國由芽がたおやかに微笑んでいる。半身をもぎ取られたかのような耐え難い喪失感。憧れや一目惚れよりも、繋ぎ慣れたてのひらを手放す辛さ。こんな気分、毬華の所為だ。
 そして僕は気付いた。彼女の通学鞄を飾っているものに。
 ありふれたバッヂかもしれない。毬華が「悪趣味ー」といいながらも握り締めていた葡萄のピンバッヂ。
 清潔感溢れるオーデコロンの中に墓場のような匂いが混じっている。
 僕は変な妄想に苛まれる。毬華が線路の盛り土に隠された穴から顔を出し、獲物を狙っている。毬華が少女を幻惑し罠にかける。少女が閉じられた遮断機をくぐる。
 列車に跳ね飛ばされ横たわる少女の胸を開き、温かい心臓を取り出す。
 乱れた黒髪に爪を突きいれ頭蓋を割り、脳に口唇をあてがう。
 そして成り変わる。
 由芽が不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
 毬華にいわせれば不健全でインモラルな小説を読みすぎたツケなのだ。   
 隣の特等席に毬華が早く帰ってくるといい。僕は牛乳石鹸の香りを恋しく思った。              

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2007.03.04

奇想に親しむ

みなさま、明けましておめでとうございます!
本年も変わらぬご愛顧承れますよう宜しくお願いします!
……
……
いや、分かってますよ?
旧正月もひな祭りも過ぎちゃってるの。
でも、まずはここから、ということで。カウンターも着実に増えており、放置していたにも関わらず見捨てずに居てくださった方々には面目の施しようもありませんが、これにて再開です。

まず、《ココログで読める小説群》について。
余裕があれば更新していきたいと思いますが、ほぼ凍結状態であるとお考えください。
これは甲斐の趣味でココログ小説を蒐集していたのであって、趣味は趣味できばらずにのんびり行こうと思います。

現在、甲斐の活動領域はほぼ九割、mixiに移動しています。
日々の雑記なんかはmixiで書いてますし、ココログで甲斐が交流させていただいてる方々で、
「よっしゃ読んでやるけん。見せちみい!」と剛毅な方がおられるなら、
甲斐ミサキ」の名前で検索するとHITしますので、ぜひお越しください。
よろしければマイミクなんかもしてしまいましょう。
mixiでのみ甲斐が管理人を勤めている創作コミュニティもあります。
「クトゥルー神話創作小説同盟」と申します(身も蓋もないな……;)

閑話休題:
昨年夏に物書き交流同盟に参加したことをきっかけに大いに創作環境が変化しました。夏から年末にかけて、五本の短編を書き、今年に入ってからも未公開含め、三本の小説が書きあがっています。
ココログ間でないことが悔やまれるものの、世界観をシェアしあい小説をコラボレートする企画も立ち上がりました。シェアワールド小説も順次、公開していきたいと思います。

初めてのオフ会もしたし、昨年後半は創作活動において、間違いなく転機になったと思います。

閑話休題:
というか本題。
年末年始にかけて、大量に読み散らかしていました。未だ読みきれずに積み読になっているものも数多。
以下列挙。
火浦功:「スターライト☆パ~フェクト」「ファイナル・セーラー・クエスト完全版」
古橋秀之:「超妹大戦シスマゲドン1、2」
阿智太郎:「僕の血を吸わないで」
米村圭伍「風流冷飯伝」「退屈姫君伝」「退屈姫君 海を渡る」「退屈姫君 恋に燃える」「おんみつ蜜姫」
R・A・ラファティ「子供たちの午後」
テリー・ビッスン「ふたりジャネット」
浅倉久志選「グラックの卵」
東雅夫編「クトゥルー神話事典第三版」

「グラックの卵」の後書きで引用されている伊藤典夫さんの言葉を引用する。

「(……)なぜこんなバカな小説に魅力を感じるのか、さっぱりわけがわからなかった。今でもわからない(わかったら身もふたもないような気がする)。しかし、その後いろいろなSFを読んでいくうち、はっきりしてきたことがいくつかある。SFというものは、どれほど科学考証をこらし、まことしやかに書かれていても、どこかにいくつかバカな要素があり、ぼくがSFに惹かれるのはまさにそういう要素があるのだということだった。俗にいう本格SFは、それらがすべて一定の飛躍のレベルのなかにあり、リアリスティックな理論づけによって違和感が隠微されているにすぎない。したがって、理論づけが希薄になり、飛躍のレベルの異なる要素が多くなればなるほど、その作品はナンセンスSFの様相をおびてくるわけである」

甲斐がラファティを今後の生涯も含めて愛してやまないのは、飛躍のレベルがずば抜けて高く、他の追随を許さないからに他ならない。ラファティは意図してコメディを書いていたのではないと思う。ご本人はトールテールだと仰っていたそうだが、それも単にバカを演じる話ではない。
火浦功は奇想という点でもしかしたら、という予感があった。だが、アイデアにおいて既存のもので満足している節がある。
阿智太郎にももしかしたらと思ったことがある。でもバカバカしい話をバカバカしいうちに終始するのは、単なるお祭りだ。一過性のものだ。
古橋秀之。彼は今のところ甲斐の模索する定義において日本人では良い位置にいるのではないか。
先日上梓された「超妹大戦シスマゲドン」が世界最強を決めるS-1グランプリというトンデモな発想から、あれよあれよという間にデタラメな、しかし性質は生真面目な視点で描かれている。
そしてテリー・ビッスン「ふたりジャネット」に収録されている作品。どれを手にしても懐かしい香りがする。
《万能中国人ウィルスン・ウー》シリーズはいうまでもなく、「冥界飛行士」「英国航行中」……
今のところ、彼がその位置にもっとも近い場所に存在している。
なんの位置かって?
ラファティの衣鉢を継ぐものの地位のこと。
飛躍的なナンセンスSFをコメディではなく、真面目におバカな、奇想天外なトールテールを書く者。

閑話休題:

甲斐がクトゥルー神話世界を好むのは、ありていに言えば、そんなバカな的ナンセンスの塊だからです。
バカな発想を科学的考証とするのか、ホラー的な要素で糊塗するのか、それだけの違いです。
上記にも書きましたが、今年に入って三本の小説を書き上げています。不真面目に適当に書いてはいませんが、なんともバカバカしい内容だと自分でも思います。でも元来、そういうバカバカしいお話が大好きなんです。
甲斐を本の虫へと誘ったのは、今は亡き、星新一大先生です。遠回りして、やっと原点にたどり着いたのかもしれません。全ての小説は奇想への道なのだと。

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2007.01.13

短編小説:おもち

 新年の明けた三が日最終日の朝、操木依子が取りとめのない、普段の自分とは微妙に異なる人生を幾通りか体験した夢から目覚めてみると、ベッドの中で自分の姿が一個の人間の形を模した、とてつもなく大きなお餅に変わってしまっていることに気がついた。ドットのように白いミッフィの顔が無数にあしらわれたクリーム色のパジャマを着こんだお餅。搗き立てのお餅ほどの可塑性はないものの、真っ白な皮膚は羽二重餅のようななめらかさ、柔らかさを保っている。これがほんとの餅膚だ、とぼんやり依子は思った。
 いったい、自分の身の上に何事が生じたのか、依子は考えてみた。夢にしては現実的過ぎた。視界(餅にそんなものがあるとするなら知覚と表現するのが一番分かりやすい)が捉えた光景は馴染みの深い、いつもの依子の部屋だった。以前に友人が大掃除という名の大改革を行って以来、片付けの「か」の字は無造作に散らばった物の中に埋もれ、依子の不精な性質が祟って女の子の一人住まいと言うには少々雑然としすぎた、けれど住み心地の良い部屋。ブラインドの隙間から射す新年の曙光は、透明感の中に冷気を伴って室内に侵入し、依子の表皮をなぶる。冷気が依子の身体から一時ごとに柔軟さを奪っていくようだった。困ったことに、今の有様を忘れ、まぶたを閉じて夢の世界へ逃避しようにもまぶたがないのだ。オーライ、依子。なぜこうなったのかじっくり検討しようじゃない。依子は心の中で腕まくり(餅はやはり餅でしかない)をして唸り始めた。
 操木家は式王子港市の中では旧家に属する。毎年、年末になると家長が近所の有志連を率いて正月に供える餅つきをするのが習わしだった。依子は帰省がてら、男連中が寒空の下で今時とは思えぬ杵と臼を用いての風流な、と言っても汗水を垂らしながらの力作業を眺めては、粉をまぶした机の上に運ばれてくる餅を時折丸める作業を手伝ったりして時間を潰していた。砂糖黄粉、あんこ、醤油。つまみ食い用に何種類かの小皿を用意して、年の瀬の穏やかな時間を大部分はこたつに潜り込んでぬくぬくと、それが依子の常だった。 餅は好きである。実家から昨日、牙城であるメゾン・ド・パピヨンの一室に帰還した折も、小さめのお重箱に綺麗にあしらったお節と共に、持ち運べる限りの餅を鞄に詰められ送り出されたものだった。それは今も玄関に置かれたままの鞄の中でひっそりと息をこらしているはずだ。正月はもちろん、当分の間を食いつなぐ大切な備蓄食料としての依子の一財産である。お雑煮。おぜんざい。焼餅。揚げ餅。餅のレトルトカレーかけ……。餅は好きである。でもそれは白米が好きなのと同等の好きさであって、特別餅が好きである訳ではなかった。行きつけの甘味処である『安寿』のお萩にしたって、洋菓子屋の『苺庵』が誇るショートケーキとどちらが好きかと問われたらきっと返答に窮するだろう。
 足もとから冷気が這い登ってくる。眠っている間に布団を蹴っ飛ばしてしまったのか、爪先がむき出しになっている。知覚という名の眼で見つめる。五指に分かれた指先はもはや形を成さず、のっぺりと平板な餅の塊がただパジャマの裾から伸びている。人間である時には意識の片隅にもなかったが、こんな姿に身をやつしてみた途端、幾千万もの大軍団で部屋のあちこちに城塞を築く、様々な種族の菌類のぬるりとした吐息、這い寄る混沌のごとき存在がひたひたと近づいてくるのが依子には感じられた。舌なめずりをし、両手を互いに繋ぎあわせて依子を囲い込もうとするもの共。彼らからしてみれば、依子など単なる丸々とした動かぬ獲物にしかすぎないのだ。そしてまた何者かの足音を聴き、逸話を思い出した。依子の住まうメゾン・ド・パピヨンはペット禁止である。というのも数年前に事を発する事件があってのこと。それまでは犬や猫は何らかのちゃんとした説明があれば、大家さんの承認ありきとはいえ、飼うことは出来た。むしろそういった『家族』は他の部屋に住まう住人達にも歓迎され可愛がられていたものだった。ところがある時、大家さんに内緒で部屋にケージを持ち込んで数匹のハムスターを飼う住人がいた。ケージの中にさえいれば愛すべき小さきもの達だったが、その住人が数日部屋を留守にしたことから災いが訪れてしまう。血気盛んにケージ内で遊びまわっていたハムスターのうちの一匹が組み立て式ケージの枠に緩んだ隙間が生じているのを発見したのだ。爪をつき立て、額を捻じ込み、横腹をぶち当て、力任せに尾をくねらせる。自分だけでは無理と悟ったのか、仲間にも呼びかけ、主のいない束の間の時間を思うがままにふるまった。そして、事、ここに成就せり。部屋の主が帰宅した頃、ハムスター達は自由を謳歌せんと、新天地に旅立った後だったのである。それからのこと、メゾン・ド・パピヨンの住居のあちこちで「鼠が出る」と噂され始めたのは。大家さんは事情を知った上でクマテトラリル、フマリン、ワルファリンと言った殺鼠剤を用いたが、人間の考えている以上に、棲息環境に順応する早さは驚異的であり、開戦時には一定の戦果を得たものの、その後はさしたる効果を得ないまま時が経ち、遂に大家さんも共存する道を選んだ。いつ裏切るとも知れぬ危うい同盟関係ではあるといえど。その脅威が間違いなく、依子の変化を察知し、一族郎党を引き連れて襲撃を始めるのは時間の問題だった。これから二股に開いた選択肢は、埃に埋もれカビに腐食されるか、ハムスターに齧られるかの違いでしかない。
 餅。餅といえば、祖母の供で聞きにいった寄席を思い出す。落語の題目は『蛇含草』と言う夏の暑い盛りの話だ。餅好きの男が遊びに立ち寄った友人の家にお邪魔し、火鉢で炙られている餅をみて、友人の断りなしにつまみ食いをする。食ってもいいが、礼儀を弁えなさいとたしなめられるも、食ってもいいのなら餅箱ごと焼いて食ってみせようと曲芸食いを披露するが、数個の餅を残してとうとう頭のてっぺんまで餅が詰まってしまう。そこで友人。風流で飾っていた壁の草を指しては、これは蛇含草といい、山で迷った人間を丸呑みして苦しくなった大蛇が人間を消化して腹の具合をおさめる腹薬だと指南。重たい腹を抱えつつ、それを長屋に持ち帰って食しころりと横になってしまう。友人の食いすぎにどうしたものかと様子が気になり訪れてみると、餅を大食いした本人の姿はなく、ただそこには甚平を着た餅が座っていた……たとえ、餅を消化する蛇含草のごとき仙草があったとして、餅の身体が溶けきった後、いったい何が残るんだろう。この身は餅と一つであるのか、それとも幾許かの何かしら依子であるものがあるんだろうか。
 眠る前のことを思い出す。実家から帰還して早々に依子が熱中し始めたのは『クトゥルフオンライン』と言うオンラインゲームである。新年の限定イベントで、通常は隠された座標に海底都市ルルイエが浮上すると知り、オンラインの友人達と新年の挨拶を交わしながら、忌まわしき深きものどもの狩りに出向いたのだった。高レベル帯パーティ推奨だったので、依子とっておきのトレジャーハンターで、ペア狩りのお供にミシェルという海産物の撃退に特化した友人が操る猫と出撃。画面のこちらに臭ってきそうな凄まじい臭気までも描画するモニターに眼を爛々と輝かせながら、お餅のように無限の如き柔軟性、可塑性を帯びた腐敗した粘着質の凝縮された触手の狂気めいた群を掻い潜り、時に通りすがりの顔なじみに回復してもらったりと、骨髄に氷水を循環させるがごときスリリングな中にも楽しいひとときを存分に過ごし、疲れきったまなこを擦りながら夜と言うには遅すぎる床についたのだった。
 玄関でチャイムの音がする。三が日の最終日、御囃子宮へと初詣に繰り出そうと年末からの約束を思い出した。相も変らぬいつものゼミ仲間だとしても、会えば改まった気持ちになるに違いない。もし会えたらの話だけど。どう説明したらよいものやら、話の糸口すら掴めぬし、口を開こうにも言葉はあ、とも、んとも出てこない。今の依子はミッフィのパジャマを着込んだ餅でしかないのだ。もう一回、チャイムが鳴る。チャイムのテンポは回を追うごとに早くなっている。ひなったらせっかちなんだから。依子は何とか玄関の方に身体を向けようと物憂げな身体に活を入れ、全力で捩った……。
 
 身体がうねる。
 驚いたことに依子の身体は持ち主の言う通りに向きたい方向を捩れた。
 身体に纏わりつく冷気が心地好い。まぶたに宿す光が急激に弱く昏くなったのを感じ、眼を凝らした。古さびて朽ち果てた、とはいえ建造物としての基礎を保っている石柱が幾本も建ち、同じ背丈ほどの長大な海草に身を巻かせている。畸形に歪んだ魚達が依子の寝そべっている寝所を回遊している。まもなく悟った。深海の果ての水底。死せるほど、夢見るままに待ちいたり。二十有余年の人生をまどろみの内に観ていたのだった。人間であった時の移ろいなど、ほんの僅かな揺らぎにすぎない。人の世は夢幻。依子であったものは軟泥に灰緑にぬめり光る巨大な身を横たわらせ、また眠りの門の戸をくぐった。 
 

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2006.12.25

短編小説:夜空より来たるもの

 北緯六十六、六度、三十三分より以北。
 真冬に太陽の昇ることのない氷に閉ざされた世界。それが北極圏だ。
 千尋は北米航空宇宙防衛司令部、俗に言うノーラッドから送られてくるレーダーサイトの情報が、刻々とリアルタイムで変化しているのをモニター越しに見守っていた。北警告システムと呼ばれる強力無比なレーダーシステムは、北アメリカの北境界線にそって四十七ケ所に設置されている。ノーラッドは、クリスマスイヴに北極を出発しようとしているサンタクロースの動きに、レーダーの照準を絞っており、一般に向けても「サンタクロース追跡プログラム」として公開している。それを観察するのが千尋の恒例行事になっていた。緑のレーダーの網に映る点に未だ動きはない。千尋はあくびし、長期戦に備えるためのコーラのペットボトルと大袋のポテトチップスを取りに立ち上がった。
 
 二〇XX年。民の困窮に目を向けようともせずただひたすらの軍備拡張を唱え続けた独裁者が遂に暴発した。大陸間弾道ミサイルに核弾頭を搭載し、某国に向け射ち放ったのである。ミサイルは大気圏まで上昇し、世界に核の冬をもたらそうとしていた。
 ノーラッドの監視衛星がその様子を捕らえていたが、もはや迎撃ままならず。レーダーの誤作動を期待するもむなしく、ただただモニター越しに願うばかりであった。
 刹那。神の御業か、悪魔の気まぐれか、監視員が瞬き一つする間に、ミサイルの影は消え失せていた。ノーラッドの職員たちは歓声に沸き立ち、一足早いクリスマスを祝おうとシャンパンのコルクを飛ばしあった。
 ところが、喜ぶのは早計に過ぎた。
 核弾頭は確かに命中していた。相手が人外のものであるからには、その本来の効力を及ぼさぬまでであった。正確を記すれば、実に威力九Mトンもの爆熱、放射性物質の洗礼は確かに影響を与えていた。マッハ八の速度をもって航路を横切らんと通りかかりしに直撃を受けた聖ニコラウスと、橇を牽引する九頭からなる忠実な従者において。
 眼にも見よ。いかなる力によってか、放射性物質の全てを総身に吸収したるニコラウスは三百メートルを越す巨魁となっていた。否や、悠然と貫禄を帯びて夜空にたなびきたる白髭も含めれば全長五百メートルにはなろうか。二十万トンを軽々と超える重量を、これもまた総身に放射性物質を吸収して巨獣と化したる赤っ鼻のルドルフを筆頭にダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン、ダンダー、ブリクセム、キューピッド、コメット。九頭のトナカイが筋肉の隆起しみなぎりたる膂力でもって支えていた。 
「ホゥホゥホゥ」
 ニコラウスとトナカイたちの一団はマッハ八の速度をもって、一夜にして世界中を巡る。レーダーサイトからミサイルが消えたのではない。直撃を受け、名状しがたい膂力をその手にしたトナカイたちが監視衛星も捕捉しえないほどの加速度をもって瞬く間に過ぎ去っただけなのだ。もはや影としても認識するのは難しいまでに。
 そして、始まった。
 十二月の雪空に漏れる吐息は白く煙らずに青白い燐光を放っている。核反応の際に見られるチェレンコフ光であろう。ニコラウスは橇に素材の判然とせぬ巨大な布袋を積んでいるが、実際にその中に贈り物が入っているわけではない。言うなれば、ニコラウスが夢を具現化する為に用いる媒介物であるのだ。夢であればいかようなものでも取り出せる。それが良きにつれ悪しきにつれ。それがニコラウスの奇跡であり、夢を得ることでまたニコラウスも存在を許される。
 その夜の出来事について、地球で過ごした大部分の人間にとっては、誠に気の毒である、としか言いようがない(ささやかな例外として、ニコラウスの力も宇宙ステーションまでは及ばなかったことを挙げる)。あえて、悪者を名指しするとすれば核戦争を引き起こそうとした独裁者であろうか。しかし彼もすぐに報いを受けることとなる。
 独裁者は権力を欲し、そして地球上における戦力の悉くを欲した。そしてその夢は叶えられた。頭上に降り注ぐ、戦車、戦闘機、原子力潜水艦、軍艦。弾道ミサイル。そして核。そのどれもが巨人の扱いたるが如くの大きさであった。夢に殉じたのであれば、或は本望であろう。同じように戦力を夢に抱く者は、悉くその夢の大きさに滅んだ。
 繰り返し告げるが、誠に気の毒であったとしか言い表しようがない。無垢な愛らしいふわふわとした、とはいえ百メートルもの高さのテディベアが頭上に突如、落下してきた時、常人はどんな反応が返せるというのか。同様の例を挙げよう。ビルほどの巨魁をもって合金製のロボットが庭先に突き立ったとして、ただ見上げるしかあるまい。
 類いまれなる美貌を追求した者は見事その願いを叶えられた。誰もが羨む微笑はもはや思うが儘である。ただ引き換えに、身体のサイズが家屋の耐久度を軽々と超越するほどに桁外れに大きくなったことなど些細なことに過ぎなかろう。その夜、同じ境遇に身を晒した者など数え切れぬほど居るのだから、新たなる出会いに祝杯を挙げることにしよう。一杯の熱いスープを求めた者は、五十メートルのプールですら溢れかえらんほどの具沢山の湯気の立ち上るスープの波に押し流され、ある者は香ばしい匂いを放つ、肉汁滴り落ちる七面鳥の丸焼きに全身で抱擁を受けた。聖夜の前夜に浮き立つ家家に降り注ぐのは、賑やかな飾り付けをしたデコレーションケーキの山。素足をかかえて凍える夜を過ごす者はスニーカーのゴム底で踏み潰され、巨万の富を夢見し者は無数に降りたる隕石の如き金貨に撃たれ、夢に埋もれた。誰しも幸せの絶頂の中旅立ったことを祈るばかりである。
 そしてまた、何よりも特筆すべきは、空想の中に生きるものどもすら、その恐るべきまでに溢れかえらんとするニコラウスの奇跡によって、血肉を宿したことであろうか。
 熱線を吐く大怪獣のはらからども、それを迎え撃つ光の巨人。ゴシックな洋装をまとい自在に動き回る球体関節人形。吸血鬼伯爵に食屍鬼姫。夜空を埋め尽くさんとするエイリアンシップ。住居を覆いつくさんと不気味な緑色に沸き立つポリプ状の生物。終末を迎える光景には相応しいとも言える。太平洋に浮上するルルイエの支配者……。
 夢をもつのは何も人間ばかりではない。旱魃化の激しい砂漠には轟轟たる雨雲を呼び、飢えたる小動物には木の実を与え、絶滅に瀕する生物にはつがいをあてがい。
 一夜にして世界中を駆け巡る。最後の最後までニコラウスとその従者たちは自分たちの変化に気付くことはなかった。夜明けと共に我が家に帰り着き、トナカイに飼い葉を与えてベッドに潜りこもうとしたとき、その名状しがたい窮屈さに首を傾げただけだった。
 規模の違いはあれど、奇跡が起こったことに間違いはない。誰が悪意なき夢幻の具現者たるニコラウスを責めようものか。こんにち、我々はペローやグリムに教わるまでもなく、メルヒェンがときに残酷なものであるということを身をもって知った。おそらく幾たりかの人間は、この夜を大過なく過ごし、新しい朝に目覚めることだろう。ささやかなる大きな贈り物に戸惑いながらも。メリークリスマス。
 
 千尋は空になったポテトチップスの袋を斜めに傾けて、最後の一欠けらまで口に放り込んだ。今観ていたのは、長い夜を過ごすために行きつけのレンタルビデオ屋であるクルウルウの店長がお奨めしてくれた一本で「悪魔の爪Ⅱ・夢幻の具現者ニコラウス」という仰々しいタイトルのホラァSF映画である。わざとフィルムにスクラッチを入れるほどの徹底したチープさにこだわった特殊撮影技術、往年の怪奇映画を支え続けた名老優であるクリスファット・リィをニコラウスに配して、これまで築き上げたキャラクターを大胆にぶち壊しもした。かと思えば名前も知らないような女優が無意味にシャワーシーンでグラマラスな裸身を晒したりして、微笑ましいほどに観ていて作り手のB級魂を感じさせるベタベタの通好みな作品で、千尋としては概ね及第な内容だった。
 PCのモニターに眼を向ける。レーダーサイトの点はカナダの森林上空を通過の真っ最中だった。今頃、カナダのノーラッド戦闘パイロットがニューファンランドを飛び立ちサンタクロースのお出迎えをしているはずだ。
 もし自分だったら、何を望むだろう。地平線の果てまでを埋め尽くした巨大な縫いぐるみの群れが朝日を荘厳に浴びていたエンドロールを思いかえす。望むなら、レイフェル・アロイシャス・ラファティの絶版本か、アヴラム・デイヴィッドスンの未訳本だろうか。それが五十メートルものトールサイズで屋根を突き破って降ってくるのを想像して千尋はうなだれた。勘弁こうむりたい。外気とエアコンの温度差で結露した窓をパジャマの袖でこすり、夜空を見上げる。明け方まで待ったところで白髭を乗せた橇が音速を突破するときに発するソニックブームに鼓膜を震わせることはないだろう。
 叶うなら靴下に入りきる夢でいいなぁ。千尋は姉から貰った特製手編みクリスマス用特大靴下を部屋の扉のノブに吊り下げた。 

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2006.12.24

短編小説:夢幻城の探求

 臥したりし静謐たる褥より這い起きたる余の記憶は曖昧糢糊として不条理なまでに無定形であり、自らの存在が何者かであるかすら明確なものはなに一つとして吾が身内にて定まってはおらぬことだけが吾が身を知る唯一のことなり。
 古古しき石造りの部屋に於いて、大きく口を開いた天蓋より覗きたるは、慄然たる帯状を成す極光の揺らめきであり、また無数に鏤められたる幾星霜もの月日を想起させる星星の瞬きが星座となりては、隠秘学者や魔術を志たる者によって密やかに暗示される神話や夢幻世界に垣間見える生物の存在を仄めかしている。恐怖に歪められたる貌にも酷似した染みの滲み出ている壁に取り付けられた格子越しの窓から見えるのは水平に何処までも見晴るかす黄昏の色であり、またその夕映えを反射させる可塑状の粘菌類を思わせる雪に覆われたる尖塔の連なりであった。
 幾許ほどの眠りを貪ったのであろう。或は無窮の時の流れに身を委ねていたようにも思えるし、或は数瞬ほどの微睡みですらないのかも知れぬ。余の褥の周りには拳ほどの丸丸とした肉を湛えた名も知れぬ鮮やかな斑紋を纏った蜘蛛が、古式ゆかしい部屋の主を気取りでもするかの如く、放射状に夥しい巣を張り巡らせていた。踵を返し見渡すと、ぎちと詰めたる所為で半ば崩壊しかかった書棚が壁の大部分を占領し、或る種の者達にとっては芳しく感じ取れる歳月を経た書籍だけが持つ名状しがたい気配を放っていた。青銅や鉄らしき金属板や鞣した獣皮で装丁の施されたものの他、明らかに獣の皮ではない滑りを帯びた生物の皮革で装われた禍禍しい書も何冊か見受けられたが、余にとって感銘を受けるもの、余自身に言明していると思われるものはなに一つとしてありもせぬ。常人なれば屍体を噛むかの如き煩悶たる狂気に総毛立つ図版やおぞましき仄めかしなど、なんの意味を成そうものか。
 建て付けのものこそ頑丈であると申せば然るであろう涜神めいた浅浮き彫りの施された青銅の扉が緑青を噴かせつつ、余を吸引するなにか耐え難いまでに蠱惑的な印象を与えた。むしろ推し量るに、重重しき扉の向こうから強かに耳朶を打つ、堕落しきった太鼓の打突音と異界から吹き零れるかのような音階の狂乱めいたフルートの音色が要因かも知れぬ。思えば余が生き永らえているのも、この忌忌しい気配に満ち満ちた居城に余以外の者が棲まいしなによりの証拠となろう。余は腰を擡げて重重しく沈黙を秘す扉を満とした力で押しやった。吾が両の掌によって憐れなる骸を晒す頭蓋骨の顎が軋むかの悲鳴を蝶番が放ち、その重苦しき口は開かれん。二人の吹き手と思しきフルート奏者による単調なる細細とした旋律と、穏やかならざる心奥を掻き乱さんとす旋律とがより大きく余の身内を震わせ、扉越しから比べれば遥かに下卑た太鼓の響きが余を導く道標となりて、吾が行く手を誘わんと大気を震わせ轟き渡りしを、満足を持って余は心地好く迎え入れた。
 余自身の記憶が定かではないのと同じく、吾が棲まいし居城の全容を知るすべを余は持ってはおらぬ。なだらかな傾斜を有する廊下は曲がりくねりながらもその終焉を計ることは困難な有様であった。降り注ぐ月光の雫を押し固めたるかの如き御影石で築かれた堅牢な城壁の向こうに横たわりし景観は、何処までも外宇宙のか黯さと夕映えを溶かし込んだ次元を超越した色彩に満ち溢れ、この古古しき居城と天空を刺し貫かんと聳える尖塔の連なりだけが確固たる存在感を示すのみであった。
 白痴を思わせる音色に誘われつつ、余が閲したる部屋は無数にありて枚挙に暇がないと申せようか。幾つかは例えるなら虚無の函である。唯、あるのみ。また或る部屋には棺桶じみた瑠璃の容器が均整に並んでおり、余の出自を知るよすがにならぬものかと中身を暴きたい誘惑に余は耐えねばならなかった。或る部屋には病的にまで神経質な画家の手によると思しき狂気に冒された筆致の細密画や、爛熟し退廃した文化背景が垣間見える慄然たる抽象画などが飾られていた。いずれにせよ、同一の惑星系のものとは明らかに異なる様式のおぞましき絵画ばかりであったが、余の眼からすれば、その中に崇拝され中傷され暗示され象徴され戯画化されているものは差異こそあれど、総じて等しく同じ神話を仄めかしているように窺えるのだ。
 蒐集家たりし嗜好の誉れは様々なりて、或は許容を得るやも知れぬが、次に立ち入った部屋の様相は異常なまでの慄然たるおぞましき気配に満ち満ちていた。或る種の年代記とでも申せようか。人をはじめ、大きな円錐状の体に四本の長い触肢が伸びているもの、樽状の胴体に膜状の翼が生え、五芒星形の海星を想起させる頭部を持つもの、汚穢なるいやらしい笑みを貼り付けたる矮人。触腕と長い鼻、蛸の眼を持ち、鱗と皺に覆われた無定形たる巨体。恐るべき狂猛さを窺わせる外骨格を有する甲虫族。人間を思わせる貌を持つ奇怪な四足獣。象よりも巨魁で馬のような頭部を頂き羽毛の代わりに鱗の生えた鳥。知性の輝きを瞳に湛えた直立爬虫類。直立歩行する菌類を思わせる甲殻生物。これらの如き外宇宙の奈辺にのみ棲息を仄めかされるような、慈悲なき眠りの神の与えしもっとも奔放なる夢の内ですら棲み潜むことの叶わぬ性質の悪い悪夢の住人どもが、類まれなる腕前を持った名工により縞瑪瑙から切り出されグロテスクな彫刻と化していた。或は逆に歪なる初源の混沌が無限なる食欲で喰らい込んでは狂気を孕みて、この場に産み落としたのやも知れぬ。大理石の床には一面に汚穢なる染みが広がっていたが、それが文様であるものか、生存していた折からの彫像から滴たり落ちた血液の仕業なるものか神のみぞ知るや。
 遂には果てぞあるかな。黒大理石の幾何学模様に敷き詰められたる廊下はうねりながらも居城の中心に向かい下降の一途を辿る。曰く、余に懐かしき郷愁じみた感慨を懐かせる部屋もありき。壁一面に様様な形容の容器が並び、酒精や硫黄、乳香、没薬など馴染みのある香りの他、腐食し饐えた臭気、金属が灼熱の炎に熔かされるが如くを湛えている。機具工具があちらこちらに散見し、なんらかの設計図と思しき複雑な角度からなる図面が貼り付けられている。部屋の中心には形容しがたい光沢を放つ金属からなる生物学的な特徴を併せ持つ機械が据置かれていた。如何なる理由かは分からねど、研鑽を積み、開発を成し実験を行うにこれほど相応しい部屋は存在しえぬと余なれば断じることが出来よう。
 余の眼前に広がりしはもはや地上ではあらず、昏い窖だった。鼠や蝙蝠らしき白骨体が所所に散見するのをいとおしく愛でながら、歳月を閲したる数千数万もの石段が無限を想起するがままに深深と伸びゆくのを余は唯、踏みしめてゆくのみ。壁面に燭台が据え付けられていたがいずれのものも蝋燭が燃え尽き或は風化し果てていた。か黯い混沌に満ちたる闇は余が恐るるべき敵ではあらず、親しき友人の如くにあれば、伴いて道をゆかん。凍てつき肌を串刺す冷気すら余にはさしたる感銘を与わず。いまや最高潮を窮めたるフルートと太鼓の音調だけが余の深奥を責め、駆り立てる唯一のものであった。
 最下層に辿りつき、余の寝所の扉に刻まれておりしと同様の涜神めいた浅浮き彫りの施された性質の判然とせぬ扉を潜り抜けた時、余のゆく手に広がりたるは夜空。
 否、深遠たる無窮の如き外宇宙の混沌であった。瓦斯状の星雲が雲霞の如くに群れ戯れる中、超新星爆発がいたるところで起こってはガンマ線を放出し死の箭となって近隣惑星の生命体の魂魄を刈っていく。赤赤と燃え盛る太陽の周りを九の惑星が時の異なる公転運動を為す。箱庭に閉じ込めたる銀河ではない。星星のそれぞれを余の手が伸びるが儘に容易に掴み取ることの叶いしそのものなのだ。彼方に時空を超越したる窮極の混沌に横たわりし、余に郷愁を感じさせたる御姿が、外なる神神の踊り回る環の中に垣間見えた。
 フルートの禍禍しき旋律が、太鼓の下卑たる打突音が、次元の入り混じり、時の狂った部屋の中心から沸き起こる。同じゅうして這い出した無定形なる踊り子が余を取り囲み、余の手を伴いて、据置かれし一本の象牙から削り出されたりし玉座へと誘い、虹色の光沢に波打つローブを余に着せ掛けた。踊り子どもは恭しい仕草で取り出したる鏡を掲げては余に向けかしずいたれば、余は余たるを遂にその各各に見出したり。
 神神よ照覧あれ。余の眷属よ、とくとそのまなこを開き余を見るがいい。
 余は黄金の海、なにものをも映し出し如何なる姿もこの身に宿そう。余は夢の國の守護者たりせば、夢の門を閉じたる銀の鍵を秘匿したりし者をとくと見定めん。未曾有の破壊を望む者あれば、如何様にも世界の終末を招かんとする世紀を先んずる殺戮兵器の製造法を授けたもう。人智を超えし暗黯の知識を欲するものあれば、ささやかな灯火を。
 ひじりなる夜を歌い踊れ。永きに亘る眠りより余が目覚めしからには。余のはらからたるものたちを旧神の牢獄より解き放たん。夢見る儘に待ちいたるはらからよ。星辰のこと如くを揺り動かしその位置を動かしたるからには大いなる歓喜を持って、余と共に高らかと吼え叫ぶのだ。余は強壮なる使者。ユゴスに奇異なる喜びをもたらすもの。月に吼ゆるもの。盲目にして無貌なるもの。這い寄る混沌。
 こころあるものよ。棲み潜みし窮極の混沌を覗きたくば余の名を口にするがいい。
 汝、ナイアルラトホテップと。 
  

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2006.10.04

短編小説:月光の雫滴る

※ 一部グロテスクな表現が有りますが、グロテスクそのものを描いた作品ではありません

 驟雨。
 アスファルトがじっとりと濡れている。
 否。赤黒く染まる其れは、雨の所為ではなく。
 血だった。夥しい血液。
 雨に晒され、白く色の抜けたものが横たわっている。
 布切れからはみ出した二本の棒状の力無きものは、かつて腕と呼ばれたものだ。
 雨上がりの雲を散らした空に冴え冴えとした光を放つ月が浮かぶ。
 明るい黄金色の雫を地上に滴らせている。
 月光を浴びて立ち尽くす少年が真っ赤に染まった両掌を凝視する。二つの球体が神経の糸を引きながら転がっていた。其れを見つめる瞳には意思の色は見えずに、鈍く濁りを帯びている。足元に横たわるものからはもはや躍動していた頃の生命のぬくもりは感じられはしない。
 血溜まりに雨の粒が撥ね、幾重もの波紋を呼ぶ。
 いつの間にか少年の回りを数多の猫たちが環を描き。
 なぁーお、と鳴いたそれらの表情は確かに名状しがたい嗤いで歪んでいた。

 式王子港署の一室。
 川瀬は咥えている煙草の灰が机に垂れるのにも気付かないほど、熱心にテレビ画面を見つめては唸っていた。
 またもや殺人事件である。
 ここ数日で、全国規模で凶悪殺人の件数が一気に急上昇していた。怨恨や痴情のもつれでは説明出来ないような……夜半の公園や廃工場といった場所で死体が発見され目撃情報も少ない、そんな通り魔的な犯行である。被害者は住所不定のホームレスや家出中の少年少女。失踪しても分からないような人間に集中していた。また、川瀬の眼を惹くのはそれだけでは無かった。報道規制が敷かれているので世間一般には知られていないが、幾つかの事件には共通項があり、有り体に言えば、遺体の一部が欠損しているのだ。
 同僚の古賀刑事が集めた資料の一例によれば、
 眼球。十指の爪。もぎ取られた顎部。毛髪付きの頭皮。大脳。肋骨周りの肉片。耳。大腿部。胃臓。乳房……そして残留するには少なすぎる血液。
 事件同士の繋がりがあるとの確証たる根拠は無い。だが、通り魔的な犯行だけでは済まされない猟奇的な殺人に何か、儀式的、カルト的な気配を川瀬は感じていた。憤懣をぶつけるかのように、フィルターだけになったゴールデンバットを灰皿に捻じ込む。
 警察庁統計では、年間の行方不明者、実際に警察に届けられた家出人捜索願数は十万三千人。捜索願なしの場合を合わせると推定二十万人。約、九・五万人は発見保護されているが、残り半分は未解決のままだ。十代の反抗期による家出が殆どだが、折りしも川瀬は式王子港署に届けられた家出人捜索願の資料を読んでいたところだった。今回も捜索願者の自宅を訪問し、繁華街を中心に聞き込みをすれば見つかる、そう踏んでいた。
 
 名前:ルナティック [sage]  ID:???
 こんにちは、クトゥルフオンラインサービスチームです。
 月見の季節となりました。これにちなんで、各地において、
「月に吼ゆるもの」の召喚儀式を開催します。座標の公開はいたしません。
 狂信者となり儀式に参加するもよし、もしくは邪神を狩るものとして、儀式の阻止に徹するもよし。
 普段から培われた皆様の腕を競い合う良い機会です。どうぞ振るってご参加ください。  それでは、今後とも『クトゥルフオンライン』をよろしくお願いいたします。
 
 名前:ルナティック [sage]  ID:???
 こんにちは、私の主催するギルド『ハイヨル☆コントン』は儀式参加側に加担いたします。ギルメンの方々にはメールで連絡を取り合うこととします。
 よいハイヨル☆コントンを期待します。
 
 名前:空鬼 [sage] ID:???
 時空連続体ヨリ早速参戦。爪ヲ奉ゲル。紅き血潮ト供ニ。
 
 名前:クラネス [sage] ID:???
 いあいあ! ルナティック殿、わしも参加してみようと思うのじゃ。うむむむ、狙うは眼球じゃな(嗜好でまくりじゃろうか)。腕がなるわい。
 それではよいハイヨル☆コントンなのじゃ。
 
 名前:星の精 [sage]  ID:???
 クスクスクス。面白そうですねぃ。ハイヨルー。うっかり召喚されたよっ! 
 クスクスクス。吸入口ぶっ刺してたっぷりと吸引するぜ(何
 
 名前:ルナティック [sage]  ID:???
 空鬼さん、クラネスさん、星の精さん、
 儀式参加、確認しました。各地盛り上がっているようですね。
 私も微力ながら参加していますよ。今回は肝臓狙いで行きました。タッパーがぎっちりで重かったw
 そろそろ祭りの日を考えないといけませんかね。
 それではよいハイヨル☆コントンを。
 
 名前:アーミティッジ [sage] ID:???
 儀式の場所は見つけたが、妨害し損ねてボロボロになりながら逃げ帰ってきた。

 名前:カーウィン [sage] ID:???
 ルナティックさん、ハィヨルー
 胃って、にゅるんとして酸っぱぃよぅな饐ぇた臭ぃがして選択誤ったかも。
 まぁぃぃけどさ。ちなみに中身は搾って棄てました。げろんちょだぉー。
 タッパーに即ぶち込み。百均ってこんなとき便利だって思ぅナリィ。
 
 比良野琴音は、内向的ではあるが礼儀正しい。
 ごく普通の大学生。川瀬が古賀と聞き込みを行った上での印象がこれである。読書好きで、大学ではよく図書館でその姿を目撃されており、講義への出席率も良好。男女関係も乱れているわけではなく、当たり障りのない付き合いをしていたようだった。
 両親の許可を得て彼女のPCを調べ分かったこと。熱狂と言ってよいほど琴音が凝っていたのが、インターネットの大型掲示板[無名都市]への書き込み、閲覧だった。
 [ムメイナビ]という掲示板書き込み専用のブラウザに残っていたログが上述のものである。ネットゲームサロンというカテゴリ内にある「クトゥルフオンライン」というゲームについてのやりとりに琴音は没頭していたようだった。
「川瀬さん、検索してみましたが、「クトゥルフオンライン」というゲーム。ソフトとしても発売されていないし、ダウンロードタイプのゲームでもないみたいですね」
 古賀がPCのモニターを見つめ、顔を上げずに報告する。
「ふむ?」川瀬にはゲームのことは良く分からない。PCやゲームに詳しい古賀に一任して琴音の本棚を調べていた。ポー、ダンセイニ、ホジスン、ラヴクラフト。
「つまり、架空のやりとりと言うことです。検索数こそ一万近く出ますが、彼女らはありもしないゲームについて、ネットで語り合っていたってことです」
 胸まで伸びた長髪で眼鏡をかけたその顔は理知的で、冷酷な感じもするが、綺麗な面立ちをしていた。川瀬は資料に添付された顔写真に目をやる。
「架空のゲーム内で、ギルドという集まりを設けて、その集まりに参加していた、と言えば分かりやすいでしょうか」
 ゴールデンバットのフィルターをしがみながら川瀬はスレッドのログを苦虫を噛み潰した表情で眺めやる。匿名掲示板でこんなにもあけすけにグロテスクな会話を書き込む連中の思考回路がまるで掴めなかった。ただただ虫唾が走る。それに単語が引っかかるのだ。爪、血、肝臓、胃臓……無意識に先日までの猟奇殺人との共通性を探していた。
「ルナティック、こいつが比良野琴音のハンドルか?」
「それはまだ、なんともですね。掲示板運営会社に情報開示請求して、通れば分かるでしょうが。ただ、確かにこのルナティックと名乗る人物を中心にコミュニティが形成されているのは事実でしょう。或は扇動役とでも言うのか」
 古賀が琴音のメッセンジャーを立ち上げる。これはリアルタイムに登録したメンバーと会話が出来るコミュニケーションサービスである。
 そこに登録してある名前はクラネス、エイボン、ギルマンなど、十人近い名前の羅列だった。空鬼、アーミティッジ、カーウィン……。オンラインのものは一人もいない。
 厭な予感がした。   
 
 私の居る場所。自由に振舞える場所。
 月光が雫となって滴り落ちる、この昏い夜に棲み潜む。
 屍者の口唇の如き、青褪めた月の明るさが私を狂わす。
 私は眷属。夜の眷属。昼の陽光はマヤカシに過ぎない。
 私は眷属。這い寄る混沌。不定形に漣をたたせフルートを奏でる。
 私は眷属。血を啜るもの。飲み干しても飲み干してもまだ足りぬ。
 月夜も闇夜も私の棲家。祝祭だ。快哉を叫ぼう。
 祝祭だ。月に吼ゆるもの。月光を浴びるもの。私は召喚する。
 
 川瀬と古賀は、琴音の持つ携帯電話の発信電波を辿った。学生であり、持ち出した財布の中身はそう無いと読んだ。銀行や郵便局からの出金も無い。家出人捜索願が届けられて三日のあいだ、二人は隈なく市内を聞き込みして歩いていた。確実に絞り込んでいる、そんな手応えはあったし、交通課の婦警たちに古賀が声をかけてもいた。
 そして四日目の夜。
 完全に陽は暮れ、十六夜、と形容するのだろうか、完全な円形に浮かび上がる月が地上を照らし、街灯の明かりさえ凌駕するほどである。夜の虫が啼いている。
 二人は屋敷森公園のベンチでぼんやりと座っている琴音を見つけた。周りの様子などいっかな気にかけることもなく熱心に携帯電話のボタンを操っている。
「おい、君。比良野琴音さんなのかい?」
 古賀が声をかけると同時に川瀬は琴音の背後に回っている。事件の被疑者ではないから、手荒なことをするわけではない。ただの用心である。
「琴音さん?」
 びくんと身体を震わせた琴音が携帯電話を落とす。
「怪しい者じゃないから。式王子港警察の者ですよ。君のご両親が心配されて届出を出されたんだ」古賀が困った表情を浮かべ襟元をぽりぽりと掻く。優男風の古賀が声をかけてこんな調子では、川瀬が声をかけていては確実に不審者扱いされていただろう。古賀が琴音の携帯電話を拾い、何気に画面に眼を向けた。

 名前:ルナティック [sage]  ID:???
 こんにちは。「月に吼ゆるもの」の召喚祭りについて。
 祭りはキングスポートで行いましょう。港の近くにマンション建設予定地があります。 月齢十五・三の日が最も相応しいと思われます。
 期日までにそれぞれ貢物を用意してくださいね。部位は問いません(笑)
 それではハイヨル☆コントン
 
 古賀がカーソルを下げる。その後には、賛同者の名前が連なっていた。
 空鬼、クラネス、星の精、エイボン、ギルマン、土星猫、カーウィン……。
「川瀬さん、これって」
 古賀の言葉よりも先に、険しい表情で川瀬が琴音の右手首を掴み、ベンチに置いてあるトートバッグを睨みつけている。月光が凹凸の影を浮かばせるそれは、何か湿り気を帯びて赤黒く染まっていた。川瀬が顎でしゃくる。
「琴音さん開けるよ。いいね」
 トートバッグの中には赤い液体の詰まった二リットル入りペットボトルが一本入っていた。キャップを開けて確認するまでもない。血液である。それも出所不明の。古賀は息を飲んだが、ゆっくりと吐き出した。「川瀬さん、血液です」
「キングスポートって言うのはもしかして、式王子港市の略称じゃないのか。比良野」
 古賀に頷いた川瀬の声が低く、問い詰め口調となっている。
「そういえば今夜は満月。こんな晩は月見でもするのか。どうだ、比良野」
 琴音は俯いたまま口唇を固く結んでいる。
「質問を変えよう。この血液はどうした、比良野」
 どんどん川瀬の声が低くトーンを落とす。乱暴な口調ではない分、川瀬が義憤を発しているのを古賀は良く知っていた。
 月光が琴音を青く照らす。月は狂気を呼ぶ、古賀はそう聞いたことがあった。
 唐突に琴音が顔を上げた。両眼に地球の衛星の姿が映える。口唇が奇妙に歪んだ。理知的で端正な面影はそこにはもはやなく形骸と化していた。自由な左手を天に突き刺す。
「……祝祭よ」
「何だと」
「祝祭よ! 月夜も闇夜も私の棲家。祝祭だ。快哉を叫ぼう」
 とめどなく、嗤い叫ぶ琴音の双眸に、妖しげな色が浮かびあがる。
 祝祭だ。私は眷属。昼の陽光はマヤカシに過ぎない。私は眷属。這い寄る混沌。不定形に漣をたたせフルートを奏でる。祝祭だ。月に吼ゆるもの。月光を浴びるもの。私は召喚する。ユゴスに奇異なるよろこびをもたらすもの。いあいあないあるらとほてっぷ!
 「古賀、この娘を署に連れて行け。俺はマンション建設予定地に行く」
 正気を失い、ひたすら叫び声を上げ続ける琴音を古賀に委ね、川瀬は駆け出した。
 
 影が躍る。
 陽の落ちた作業現場に人の気配などするはずが無かった。本来であれば。
 港から吹きつける潮風の生臭い魚の腐ったかのような腐敗臭に混じり、殺人や事故現場で嗅ぎ慣れたことのある不快な臭いが川瀬の鼻腔を刺す。
 鉄骨がまだ完全には組み立てられていない棟の中心に、彼らはいた。
 八人の男女が円を描くように立ち、更にその周りを夥しい数の猫が群がっている。観察してみれば、幼さ、あどけなさを残した十代から二十代の一見何処にでもいそうな若者たちだった。月光に浮かび上がる相貌はどれも白痴めいた熱情に駆られている。
 空鬼、クラネス、星の精、エイボン、ギルマン、カーウィン、アーミティッジ、土星猫。彼らがギルメンとやらなのか。彼らの環の中心には窪みがあり、並々とした何かが湛えられていた。
 月光に揺らめくそれは赤く照り映えたゆたう。
 湿気でもない、じんわりと魂魄から冷えるような名状しがたい気配が立ち込め、川瀬は飛び出す機会を逸した。地獄めいた血の池に若者たちが手に持つタッパーから何かを取り出し、次々と放り込んでいく。あれは、細くうねったチューブのような桃色の……川瀬は隣の県で大腸と小腸が欠損した遺体が先日発見されたことを思い出していた。
 削ぎ取られた耳や視神経が繋がったままの眼球、大腿部、歯の剥き出した下顎。
 無数の人体を司る部位が、切り取られ、抉り取られ、噛み千切られ、毟り取られ、捻じ切られ、元の形を思い出せぬ冒涜的な有様で血溜まりに沈んでは浮かび上がる。
 若者がペットボトルから其処に注ぎ込んだ。血液か、尿か、脳汁か。
 呪縛されたかのように川瀬はまるで動けなかった。長年の刑事生活でこんな場面に出くわすことなど一度たりとて無かったのだ。
「祝祭だ」一人が声を上げる。おぞましき儀式の司祭めく無貌の仮面をかぶった、十二、三歳だろうか。八人の中で最も若いと思われる少年とも少女とも判別のつかない、仮面でくぐもった声が口火を切ったと同時に皆が快哉を上げ始める。
「祝祭だ」猫たちが唱和する。空気が胎動する。地球外とでもしか表現仕様の無い在りえざる気配がざわりと場に降臨する。下卑た太鼓を打ち鳴らすかの振動が足元を這う。
「強壮なる使者にして這い寄る混沌よ、我らは汝を召喚するものなり」
「祝祭だ。月に吼ゆるもの。月光を浴びるもの、我らは汝を召喚するものなり」
「いあ、しゅぶ=にぐらす。我らは千匹の仔を孕みし森の黒山羊の名を呼ぶ」
「いあ、ないあるらとほてっぷ。盲目にして無貌なるものよ」
「祝祭だ」
「祝祭だ」
 不意に川瀬は気付いた。血溜まりに誰か横たわり蠢いている。おぞましく血腥いが目の前で行われているのは馬鹿馬鹿しいカルト結社的な儀式に過ぎない。生きた人間が囚われているなら、救い出さねば。応援を頼む間など無い。
「お前たちそこで何を、して……」
 天空に擁く月光の雫を滴らせそれはゆらりと立ち上がった。夜闇を凝縮したよりもなお昏い暗黒を、地下神の住まいし冥界の彫刻家が夜毎観る冒涜的な悪夢を彫り込んで擬人化したかのような黒い肉体を月明かりが透過する。その双眸からは在りえざる角度を持つ無窮な外宇宙の果て無い星々の瞬く光が溢れ出し。
 無貌の如き面妖に裂け目が一筋走り、赤赤としたものが覗く。
 それは夜を劈き月を飲み込まんとする慄然たる咆哮を轟かせた。





  

物書き交流同盟悪の結社祭りへの投稿作品


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Evidence3

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2006.09.25

グロテスクの注意書き

某所に投稿した小説が、「グロ表現に引っかかる」として、注意書きを記載されてしまいました。
映画やコミック、小説等において、グロテスクなものを好む傾向にはあると自覚はあるので、今回のことは、自分の作風を見つめるよいキッカケにはなりました。

うーん、甲斐が一番傾倒しているラヴクラフトはホラァ小説家ではあるけど、グロテスクを追求する作家ではないんだよなぁ。
誰の影響か、おそらく、竹河聖や、和田はつ子、朝松健や、菊池秀行あたりにあるのかな。あとは海外物のB級ホラァ映画(向こうのはスプラッタァが中心で、日本のような精神的ではなく即物的な恐怖が多い)。

今回、「悪の秘密結社」と聞いて、思い浮かぶ悪を書いてください、というお題だったので、
カルト的な個が集まることで、世間からみれば悪そのものの顕現になるという、筋書きでした。
グロテスクな部分は確かに含んでいることを否定しませんが、そればかりを取り上げられるのも、ちょっともにょる。というか、書き手が本来描こうとしているのは、ストーリー全体であって、グロテスクそのものを描こうとしているわけでは決してないので。
そもそも、普段書いてるのって日常小説で時折、向こう側にブレるんですよね。書く志向性が真逆へと。

これまでに書いてきた小説の中にはもしかしたら、グロテスクな描写を含んでいるかもしれない。
でも、それが本筋ではないので、これまで、前書きとして「この小説にはグロテスクな表現が含まれている」とは記しませんでした。その一言によって、読者の幅を狭めたくないからです。
なるべく、偏見無しに読んで欲しいし、小説そのものの内容はニュートラルな立ち位置で受け取って欲しいので。
グロテスクな場面はあったが、気にせずに読んだら物語は楽しめたと思って頂けるのが一番なのです。

……
というのは書き手の思い上がりかもしれません。今回、身に沁みました。 

世間にはグロテスクな描写が例え血の一滴であろうとも駄目な人は駄目だろうし、死体の描写が駄目な人もいるだろうし、逆に、精神的に追い詰められる狂気にグロテスクさを感じる人だっているでしょう。
でも、無理やり、グロさえ乗り越えればあとは面白いから読みなさいと押し付けることがあってはいけない。
そもそも書き手は主観なので、どこまで書いたらグロテスクになるのかという客観的な目を失いがちです。言うまでもなく、甲斐にもその判断はつきません。

とりあえず、次回に掲載する小説「月光の雫滴る」は、前文に注意書きを記載することにします。

それでは次の記事までハイヨル☆コントン。


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2006.09.21

悪の秘密結社祭りに浮気中

物書き交流同盟に投稿用の小説のお話。

秋祭り用小説を投稿し終わったあと、すぐにでも神話祭り用の小説に取り組むつもりだったのだけど、
……。
無理でした。
甲斐にとって「神話」といえば、クトゥルー神話でしか在りえないわけですが、プロットもかたまりキャラクターの設定もある。でもなんだろ、好きすぎて憧れのままにしておきたい、みたいなそんな感じ(何を今更)
なので、脳みそのチューンナップも兼ねて、悪の秘密結社祭りに手を出すことに相成りました。
そもそも、日常小説から、いきなり神話小説を書こうだなんて、ギャップのありすぎる展開だったんだと。
リハビリを兼ねて物書き中です。
といって、もはやこれを神話に提出したらええやん、てくらい、クトゥルー神話に侵蝕されちゃってるけど。

秘密結社といったら、ショッカーか、もしくはX-FILESに出てきたような政府の秘密組織みたいなものしか浮かばず、悪役と聞いてもグランディス一味か、ジブリ作品に出てくるムスカしか出てこず。
一番馴染みがあるのが、クトゥルー神話に出てくる「星の智慧派」や「ダゴン秘密教団」といったカルト教団なんですよね。そこから発展させていったプロットなので、一般に定義される悪役ものとは異なった小説になるかもですが、そこは堪忍してくだせえ、お代官様。

グロさ控えめ(なはず)ですが、何分、まだ途中なのでうっかりどうなるかワカリマセン☆
客観的にはまだ(グロは)問題ないといってくれる盟友がいてるので、その言葉信じます。
ピカレスクなんだから、血とか内臓とか平気だよ、だよね(変なスイッチ入った)

それでは次の記事までハイヨル☆コントン。

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2006.09.08

秋祭り小説書き終わりました

物書き交流同盟において開催される秋祭りに提出するための小説を、暫定ながら書き上げました。
神話小説で参戦の予定だったのですが、祭り皆勤賞目当てに秋祭り小説に比重を移していました。
今回の秋祭りは、同盟加盟者が各自提出したお題目の中から一つを選び(無論、自分が提出したお題を除く)、
それを秋仕立てにするというもの。
読書の秋、芸術の秋、食欲の秋と種々あるなか、甲斐は食欲の秋テーマでお題に取り組んでます。
夏祭りではスプラッタァホラァを全面に宣伝した所為か、グロ耐性の無い方には敬遠されたみたいで、
ショッキング!!!(某ジョンソン風味)
今回は例えグロくてもグロい場面があるなんて一言も宣伝はしない。そう堅く心に決めたのでした(というかグロくないから)
キャラクター小説というジャンルに当てはまるかは別として、登場人物は毎度の連作短編から、依子、比奈子、倫太郎のトリオを選択して書きました。使い慣れたキャラクターだからなんだか書きやすかった。そうか、これがキャラクター小説といふものか!(と一人驚愕……するほどでもないけど 笑)
というわけで、よし、秋祭り小説読んでやるぞ!とKIAIの入った方は、ミナソコノ住人の《日常小説編》で予習されるのもいいかと思われます(宣伝か! 全くそのとおり)
ホラァ小説を書いた後に日常小説を書くとなんだか一息つけますねぃ。
祭り小説は第一に同盟での公開が先なので、ココログでの公開は10月27日以降になると思います。
うーん、〆切まで推敲しようっと。

さて、今度こそ《神話》小説に取り掛かろう。
もちろんクトゥルーを題材に。江國香織脳からラヴクラフト脳へとシフトチェーンジ!

それでは次の記事までハイヨル☆コントン。


《ミナソコノ住人》では随時、リンクを張らせていただけるココログ小説サイトを募集しています。
今までサイトリンクを張らせてくださってる方々はもちろんのこと、自薦、他薦を問わずにコメントやトラバしていただければ、すぐさま登録作業に勤しみたいと思います。一次、二次創作は問いません。
なお、日々の更新履歴はミナソコノ住人BBSに記載してありますので、ご参照ください。

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2006.09.02

ChatChatChat

久しぶりにココログ小説群更新しました~。
幾ら追加したところで記事が新着に上がるわけではないので、モチベーションが夏場などは上がらないのですが、こやつ、サボっておるなと思ったら、遠慮なくツッコミいれてやってください。
さっそく、秋月キョウさま、喝アリガトウゴザイマス<(_ _)>
ココログ小説は色々チェックしてます。なにやらカテゴリー的には恋愛小説というか私小説が多いですねぃ。
もっとこう、背筋がぞくぞくするスプラッタホラァやクトゥルー神話が読んでみたい年頃なんですが、まぁこれはいずれ甲斐が自分で書くということで……。てことで新作サイトさんはぼちぼち巡回しておりますb

近況。
日々、物書き交流同盟のチャットに出没して明け方まで喋ってます(一時期のネトゲ廃人だった頃を思い出してしまうくらいに)。一部ではチャット皆勤賞という噂も(笑)
物書きの仲間が欲しいと思っている方、オススメの同盟ですよb
(ちなみに昨夜は同盟繋がりで8時間耐久グロテスキューメッセンジャーしておりました☆)
物書き同士のやり取りであるので、純粋にプラスになる話題ばかりで、しかも毎日と言って良いほど話題が異なるので飽きがこないです。それになんだか居心地がイイナリィー(自堕落)
悩み所は、交流はしたいが、そうしてると創作時間が削られてしまうという罠。
管理人さんはチャットの片手間にサイトページを更新されてしまう才媛なのだけど、そんな真似デキマセン。

今は同盟小説のお題目として「秋祭り」「悪の結社」「神話祭り」とあるのですが、甲斐はクトゥルー神話で神話祭りに参戦予定です。皆勤賞できるかなぁ。
とりあえずは、読書はラヴクラフト全集オンリィ。脳みそをクトゥルーに染め上げるのだっ、ちうわけや。

それでは次の記事までハイヨル☆コントン。


《ミナソコノ住人》では随時、リンクを張っていただけるココログ小説サイトを募集しています。
今までサイトリンクを張らせてくださってる方々はもちろんのこと、自薦、他薦を問わずにコメントやトラバしていただければ、すぐさま登録作業に勤しみたいと思います。一次、二次創作は問いません。
なお、日々の更新履歴はミナソコノ住人BBSに記載してありますので、ご参照ください。

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