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2006.08.30

大阪弁プロキシ

同盟チャットでお国言葉遊びをしてたら、某Yさんが「こんなの知ってる?」と大阪弁プロキシなるものを紹介してくださいました。
プロキシサーバーに導入すると、サイトが大阪弁に強制変換するというもの。
なので、同盟の方のサイトを大阪弁に変換してひとしきり、腹筋および横隔膜が変な具合によじれてました。
結論:恋愛小説は大阪弁にすることで切なさが増してはんなりするが、ホラー小説はただギャグになる。
(ああ、ちなみに昨夜のチャットは朝の7時を回っておりました。Tさん、楽しゅう御座いました。)
というわけで皆さんにもおすそ分け。夏祭りに提出した小説の大阪弁版、ちうわけや。

番外編:短編小説「這い寄る足」


 ミシェルがいなくなってしもた。
 台風と張り出した高気圧の所為でなかいなか降り止まぬ長雨ちゃんを鬱陶しく思いながら、三日ばっかり窓の外に見える御囃子宮の森をわいは眺めるばっかりやった。
 ミシェルちうんは御囃子宮をねぐらにしてん猫の名前でわいが名づけ親や。どなたはんかがホッたのやろうか、茶と白と焦茶の典型的な三毛で、三毛のミ、L型に白く浮き出とる毛並みから白エル。略してミシェル。わいのネーミングセンスやなんてこないなもん。いっぺん連れ帰ろう思ったんやけど、猫アレルギーの家族がいて諦めざるを得なく。それに気まんまな猫でやったられつき甘えてくるもんの、確固とした独立心の持ち主で家に居ついてくれるとも思わへんかった。典型的な放浪猫なんや。くるくると形を変える瞳、小まめな毛づくろいのおかげでふわりとしたひなたの匂いを感じさせる背中。ちびっと曲がり気味の尾っぽ。ミシェルと呼ぶとナォーと返事をしわいの膝元に額を擦り付けてくる無邪気な人懐っこさ。猫好きなわいはたちまち彼女(三毛猫は圧倒的にメスが多数派なんや)の虜となり、ささやかいな友情の証として赤い首輪を贈ったちうわけや。ほんで毎日のように御囃子宮に通ったもんやった。
 それが今夜は見かけへん。
 長雨ちゃんに閉じ込められとるあいだに夏休みのレポート課題はあらかた終えてしもて、久しぶりに雨ちゃん上がりの澄んや夕暮れの下、ミシェルのテリトリーである御囃子宮界隈を散歩がてらぶらぶらと散策するちうわけや。顔なじみの猫たちがそこの路地、あそこの公園といった風に普段は見かけるのやけど、長く降った雨ちゃんの所為やろか、どこぞに避難してしもたんか、一匹もなじみの顔を見ることが出来のうて、わいは少々気分を持て余してまう。
 人酔いするほど御囃子宮は活況の賑わいをみせており、それもそんはず今日は葉月夜市の日。月にいっぺん、瀬戸物市や朝顔市が催される境内で今夜は多種様々な夜店が立つ日なんやったちうわけや。
 白地に紺で「葉月夜市」と染め抜かれた幟が境内の脇に竿立ち、アセチレンライトの白熱した光が夕闇を明るく照り焦がす。
 射的、水風船釣り、くじ引きに艶やかいな浴衣茶店、アニメのヒーローやヒロインの顔を模したお面屋。色とりどりの輪投げ。似顔絵描きの見本が並び、涼しげな音色を奏でる風鈴屋、金魚すくいちうわけや。男の子たちが輪を作る甲虫屋。わいは一軒一軒を冷やかしながらミシェルがおらんかあちこちに視線をやるちうわけや。
 御囃子宮におる猫たちは参詣客に可愛がられ随分と人馴れしてんねんさかい、多少の人込みにも物怖じしやせん。夕暮れのこの時間、境内を悠然とうろついていそうなもん。特に今夜は何というても食べ物の夜店が豊富に出店してん。万年欠食の野良たちが見逃すわけがなかった。やのに気配すら毛ほどに感じられへん。
 綿菓子の甘い香り、ポップコーンのバターが溶ける匂いちうわけや。シシカバブや焼き鳥が香ばしく焦げ、焼きそばの安っぽいソースの香りが漂うわ。フランクフルト、大判焼きにかき氷、林檎飴、杏子飴、お好み焼きに鮎の塩焼き。どの店も、向かい、隣の店に負けじと威勢のよい陽気な呼び声で客を招いとる。どこにもおらへん。ミシェルどころか他の猫さえも。 
 いつの間にか人の流れから外れとった。とはいえ、どこまでも夜店はあるもんで、奥まった敷地に設けられはった屋台から食欲の沸く匂いが漂ってくるちうわけや。ミシェルを探し回っとった間に随分と時間が経っとったようで、猛然と胃が食物を要求し始めたちうわけや。
 看板には「新鮮獲り立ての蛸焼き」とあるんや。わいが店を窺っとることに気付いた店主は猫背の、どこぞ慄然たる両生類を思わせる相貌で「今獲り立て出来立て焼き立ての蛸焼きを一つどやい」と言い、ワイが思うにはは笑顔思しき表情を浮かべたちうわけや。出来立てはともかく、獲り立ては言い過ぎやろとわいはおもたが、店主の手元を覗き込んでみれば、なるほど、俎板の上で灰緑色をした触腕がうねうねと蠢いとる。生きた蛸の足を見ることやらなんやらへんかったわいは鉄板から吹き付ける香ばしい匂いに負け、一船注文したちうわけや。
 こらわしが食うさかいと取り置きの蛸焼きやのうて、店主は目の前で蝕腕を刻み始めたちうわけや。手馴れた手つきで粉を溶いた素を鉄板に流し込み、天カスやキャベツ、紅生姜と共に大振りに刻んや蛸を放り込んでゆく。たちまちのうちに、わいの手元には船に盛られはった六つの蛸焼きがあったちうわけや。早速の出来立てを口に押し込む。噛みしだいた感触はカリッとして、すぐにとろりと溶けたちうわけや。蛸の食感がむちむちとして心地よい歯ごたえを感じさせるちうわけや。
 こないに美味い蛸焼きを食べたんは生まれて初めてやった。出来立て獲り立てを名乗るんは伊達やないんやなと思て、店主を見やるちうわけや。薄闇に名状しがたい表情を浮かべとったが、ワイが思うにはわいの反応に満足してんやろ。わいは満腹感の気安さから店主に声を投げかけたちうわけや。「こらどこで獲れた蛸なんやろかこれがホンマに」
 生け簀で飼育してん、良かったら見るかいちうわけや。
 店の裏には大きな水槽が置かれとった。容器一杯に蛸がのたうっとる。
 否。厳密にそら蛸とちゃうかった。ほんで水槽の中身は蛸状のモノだけとちゃうかった。
 ああ、珍しいかい? 
 こら蛸蟲とぬかして、マサチューセッツ州のインスマス沖合いの岩礁に棲息する蝕腕類や。極めて蛸に近い、いや、蛸よりも美味いちうわけや。ただ唯一の問題は死んや途端に急速に腐敗が始まること。それを防ぐんは生きたまんま調理するっちうことや。この街はどエライええ。
 わいはもはやなあんも耳に入らへんし、嘔吐が止まらへんかった。食べたみなを吐き戻す。
 蛸蟲は屍体に寄生するんや。ほら。
 水槽の中には溢れんばっかりに烏や鳩、犬、ほんで猫の屍体に埋め尽くされとった。その地獄めいた陸地の上を蛸蟲と呼ばれた蝕腕類の灰緑が這いずり回るちうわけや。糞尿や血液、濡れた墓場の土の如き匂いが鼻腔を容赦なく襲うわ。見慣れた赤い首輪……。
 わいは意識を失ったちうわけや。

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コメント

こにちはー!
コメントありがとうございます

大阪弁に変換>
ホラーには不向き、というか、会話文が多い文章とは相性がいいみたいです。必然的に恋愛小説のようなものが適性出てくるんだと思います。

機会があれば変換してみてください。腹筋、横隔膜が大変なことになっちゃうので。そこは覚悟の上でb(笑)

投稿: 甲斐ミサキ(to葵留美さん) | 2006.09.02 14:24

こんにちは
大阪弁に変換ソフトなるものの存在は聞いておりましたが。。。。^^; なかなかナイスな小説になってますね~ 確かに大阪弁ってギャグっぽいのには合うのかもしれませんが、ホラーには不向き。。。腹筋鍛えられたら、痩せるかしら?^^;

投稿: 葵留美 | 2006.09.02 09:46

いあ、PN名乗っていただいても差し支えはないと思いますけどね(笑)

折角なので載せてしまいました。別バージョンがツボに入ってしまったので。
個人的には変換プロセスの問題なのか、大阪弁としてどやねん、と思う部分もありますが、ありのままで載せています。

であであ、ハイヨル☆コントン!!

投稿: 甲斐ミサキ(to某Yさん) | 2006.08.31 03:53

 ども^^、某Yです。
 楽しんで頂けたようで幸いですよ。

 まさかテキスト載っけるとは思ってなかったです。^^;
 見られない人もいるので、そうなりますよね。
 横隔膜を鍛えさせてもらいますぜ。

 では、ハイヨル☆コントン!

投稿: 某Y | 2006.08.30 22:58

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