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2005.07.06

短編小説:雨と檸檬

 ああ、もし自分自身の『ゼーレ(魂)』の存在を定義する事ができるのなら、或いは僕はその魂の右手を長く、それこそ長く伸ばし、死の顎(往々にしてそういう表現は場合によって適切であった)に囚われようとしていた彼女の襟首を掴みとって二三回彼女の頬をひっぱたき、元の、今ではすっかり人としてのぬくもりを失ってしまっている彼女の身体に無理やりにでも押し込んだことだろう。そして僕はこう彼女にいうのだ。『身体をおいて何処に行くんだ、君はどこにも行かなくて良いんだ』と。しかしいまの僕は医者でもなかったし、神学論者でも唯心論者でもなく、ただ一介の学生に過ぎなかった。語ったことはもちろん実現するはずもなく、そんなことは机上の空論にすらならなかった。
 実際の高奈津さんは柩に小さく収まっていた。いくら頬に朱を差そうとも指先に触れる死の冷たさまでは隠し様がない。棺の中の肉体は彼女の抜け殻にしか過ぎず、今では彼女の存在を構成していた部位の一つに過ぎなくなっていた。
 それまで僕は死の概念とは生の延長線上の最終点だと思っていた。いつかは人は死ぬものだと。しかし、今回のことで、死とは生の終わりではなく、生の中に内包されているものだということに気付いた。死とは唐突に訪れるものなのだ。それも寿命だとか運命だとかそんな言葉で説明されたくはない。そんなものは牛や羊にでも食わせておけばいい。死とは非日常性の問題であり、日常とは向こうが透けて見えそうなぐらい薄く、あまりにも脆いヴェール一枚で非日常と隔てられている、そんな危うい存在であるのだ。考えたことはあるか? 人が肺炎なんかで死ぬなんて。

 その電話が鳴ったとき、僕はドイツ語の動詞変化表を眺めながら暗記作業を行っていた。窓の外では大気が飽和の限界まで水分を含んでいたしそのことは僕にそう遠くない時期に雨が降ることを予感させていた。彼女流にいえば曰く『オゾンの匂いが地面から沸き立っている』ということになる。暗記作業をするとき、僕はいつも耳障りにならない程度に音楽をかけていた。ワーグナーであるとか、ドヴォルザークであるとか。そしてその時はカラヤンの指揮による『惑星』がCDプレイヤーのアンプから流れていた。ホルストは占星術を学んだ結果この組曲を着想したという。それにあやかるわけでは決してなかったがなんらかのインスピレーションを得ようと動詞を暗唱しながら僕はじっくりと耳を傾ける。
 薄暗い窓の外を地響きのような唸り声が響いた。あれは雷の音だ。春の終わりを告げる梅雨の尖兵はもうそこまで来ている。
 雷鳴と電話の呼び出し音が重なり合って部屋に満ちていく。
 正確に十回目のコールで僕は受話器をとった。
「高奈津さんが死んだよ」その電話に『もしもし』も『久しぶり』もなかった。既に相手が誰かを認識した上での切り出し方だった。そのことは電話の向こう側にいる中学の時の同級生の姿を思い浮かばせた。
 僕は黙り込んでしまっていた。向こうが怪訝そうに呼びかけてきていたが、彼の声はまるで現実性を帯びていない波打ち際のクラゲみたいにさ迷っていた。
 しばしの沈黙。
「……誰がどうしたって?」まだ僕は話の糸口が掴めていなかった。いや、分かっていたが理解したくなかっただけなのかもしれない。
 受話器の向こうで幼稚園児にひらがなを教える様にゆっくりと彼は事実を述べた。「死んだんだよ、高奈津詩帆が。肺炎で」
「そう」その時の僕の返答はごく呆気なかった。むこうでも何らかのリアクションが返ってくるものと思っていたのだろう。何故なら彼は僕が高奈津さんのことを好きだということを知っていたのだから。
 言葉とは裏腹に僕はそれこそ酷く混乱していた。結果として思考に能力を奪われ、結果として不用意な言葉が口を突いて出ただけだ。
「葬式出るだろう?」そんな僕の混乱を察したのか必要最小限の言葉しか彼は発しなかった。そう、慰めなんて陳腐なだけ。ただ、僕は考える時間が欲しかった。
「……出るよ」日にちと時間だけを確認し、返事も待たず僕は受話器を切った。
 後で思い出してみても、その知らせを聞いたとき僕の中にあったのは不思議と悲しみの感情ではなかった。それは深い喪失感だった。もう彼女に触れることが無いのだという、そしてそのことは僕の歩む今後の人生の中に決してこれから先、登場することが無いことを意味していた。彼女が死んだという事実はそのまま脳の記憶中枢にたどり着かなかった。あるいはこのとき胸の中の空漠……、必ずしも悲しみと喪失感とは同義とはいえないけど、もしイコールとするならば今ごろ喪失感に押しつぶされ、遥か彼方に僕の精神は流されていたことだろう。一片の涙さえ浮かぶ事は無かったのに。ただ、もう彼女は何処にもいないのだ。その存在は、胸の中の空漠は恐らくもう元には戻るまい。毀れた水が元には戻らないように。過ぎ去った時間を巻き戻す事は誰にも出来ない。
 この場合、『存在』と『死』は同義であった。すなわち柩の中の高奈津さんと、外の僕を隔てている硝子の小窓とはたった一枚の薄い板であり、鍵というものがなくてもその向こうには行ける。もっともそれはガラスを割る事を前提とした答えであり、そうするためには道具を使うなり、素手で叩き割るなりしなくてはならない。そうすれば僕に限らず誰だって、『死』というものには限りなく近づけるだろう。しかし、それは実際には困難であり難しい。もちろん自分だって傷つくし(この場合、この例えは正確な意味合いでのメタファーではない。なぜなら事象を単一的に考えたとしても、やはり人は自らを傷つけること以外に死に直接触れる手段がないと思われるから)例え、向こう側に飛び込んだとして生と死を隔てていた硝子板は復元される事はないからだ。
 硝子板を割り、飛び込むか。飛び込まないのか。それとも人はこういうだろう。『最初に硝子の小窓を覗かなければいい。ただそれだけのことだ』と。そうすれば悩まなくてもよいのだから。
 もう定義付けはやめよう。不正確なメタファーは得てしてその本質を見失いがちになる。そして、高奈津さんの『死』のリアリティーを失う事は僕にはおよそ考えつかないものだった。

 僕はカッターシャツの上に薄手のジャケット一枚を羽織ると大学に向けて歩き出した。一昨日の通夜、昨日の葬儀といまだ心の整理は固片付かず、混沌としたままでいた。僕はいつも何かしら考え事をするとき図書館へ行く。古今東西の書物に囲まれていると不思議に心が落ち着き物事に集中できるのだ。もしかすれば図書館自体よりも図書館へ行くという過程、スタンスのほうがより重要であったのかもしれない。
 神樂坂の旧い町並みを通りぬけ(土地の名の通り、この辺りは手厳しい坂も含め、なんと坂の多い事か)、屋敷森公園を横手に眺めながらどんどんと駅の反対側方向へ歩いていく。梅雨の時期に傘を持ち出すことを失念していたが、たまには雨に濡れるのもいいかもしれない。そうこうしているうち目的の白亜の校舎が目に入ってくる。二十分ほど歩いただろうか。遠雷が耳をかすめるが雨は未だ降っていない。代わりに空気中の水分が湿気となり、汗と混じりあってシャツを重くさせた。
 図書館を目に留めながらも取り止めの無い事が泡のように浮かんでは消えていく。歩く行為は僕を限りなく単一の思想へと向かわせてゆくのだ。
 今しがた家を出る前の事だ。ポストを覗くと夕刊と共に一通の返信葉書きが届いていた。それはクラス会の知らせであったが、僕は見ずにゴミ箱に放りこんだ。高奈津さんのいないクラス会にどんな意味があるというのだ? 彼女が死んですぐにクラス会をやろうとする幹事の感性が理解できなかった。いったい誰なのだ、僕は思いなおし葉書きを拾い上げた。そして送り主の名を見て全て分かった。
 送り主はいわゆる何処にも一人はいるだろうクラスの人気者で、一生友達に不自由する事のないような女の子だった。顔も奇麗で話題も豊富だったが、その中に僕にとって何一つ内容のあるものはなかった。それに比べ高奈津さんはいわゆる目立つ女の子ではなくて、顔もずば抜けて奇麗とは言えなかった。(それは成長期の過渡に当たる時期だったからかもしれない。女の子とは気付かないうちに奇麗になるものだから)。そして友達と呼べる子も少なかった。彼女はもくもくと休み時間に小説を書いているような女の子だったから。だから送り主である女の子は悪意はなく、しかし高奈津さんのことを歯牙にも掛けていなかったのだろう。そういえば葬儀にもその顔は見当たらなかった事を思い出した。
 発作的に僕は、その葉書きを縦に裂き、横に破り、細切れになるまでその行為を続けた。詮無いことなのだが、ただ僕はそうせずにはおられなかっただけだ。

 のんびりと歩きすぎただろうか。辿り着く頃には電話があった日と同じ、見上げた空の色はまったくの曇天で、それを受けて目的の白亜の建物は濃紺色に染まっている。
 カウンターを抜け迷うことなく文学の棚へと足を向ける。幾人かの見知った顔に会釈を交わしながら棚につくころにはかすかに効いている空調のおかげで汗は幾分ひいていた。
 気の向くまま本棚に手を伸ばす。芥川、幸田達に混じって江戸川乱歩全集が置いてあったりするのは非常に喜ばしい。昭和四十年頃には衰退の一途を辿りつつあったといえど、市井を語るには欠かせない。貸し文庫屋などによって大衆に広く読まれたということは、時代の証人が乱歩を正当な文学より文学たりえた存在であると評価していた証しであるのだ。その点で僕の友人の言葉を借りて言うならばここの管理責任者は『分かっている』ということになる。
「四之宮クンじゃない?」
 振り向くといつのまにか隣りに女の子が立っていた。僕は声を掛けられるまで存在に気付きすらしなかった。思考にはまると中々抜け出せないのは僕も高奈津さんと一緒だった。
「……えっと」
 君は誰だったか、そう続くはずだが声が出なかった。ある種の既視感がよぎったためだ。しかしそれも長くは続かない。なんのことはない。隣りの彼女が僕を忘我の淵から掬い上げただけだ。
「四之宮クンでしょ、国文の三列目」
 国文で三列目で僕が関係しているとすれば一つしか浮かばない。『日本近現代の国文学と思想』という長ったらしい名の講義だけだ。毎回小レポートを課す教授のおかげでいつも講堂はいっぱいかと思いきや、この時期で既に学生の大半が単位の放棄を決め込んでいる。そして僕は貴重な受講者の一人だった。
「いつか話してみようと思ってたんだけど、機会なくて」と彼女は続けた。
 彼女はデニムとシャツの上からモスグリーンのヨットパーカーを羽織り、肘まで袖を折って本棚に持たれかかるように立っていた。無造作に伸びているかの髪の毛はけしてボサボサというわけではなく肩越しから背中に流れている。
 わたしの事あまり気にしなくていいよ、と彼女は僕の心を先読みするかのように言った。
「惚れた?」よほど僕は彼女の顔を見つめるか何かしていたのだろう。慌てて首を振った。
「とんでもない、あまりに急に話し掛けてくるから正直混乱してた」
 ふふんと彼女は笑った。
「キミは初顔見せかもしれないけどわたしはそうじゃないんだよ」
「それでキミは?」ああ、まだ名前を聞いていなかったと思った。
「それって室生犀星の詩集だよね。詩も読むんだ」
 彼女は僕の手を指差しながら微笑んだ。何だか感じのいい笑顔だ。右頬にだけ笑窪が浮かぶ。手にしていたのは『或る少女の死まで』という短編小説であって彼女の問いかけは決して正しくはなかったが、無論のこと室生犀星が詩人として大成していた事は周知の事実であったからあえて訂正をするような野暮なことはしない。僕は話をはぐらかされた気がしたのだが、電話があってからずっと鬱屈していた心のたがが少しだけ緩まった気がし、こう思った。彼女が誰だっていいじゃないかと。そして気分が和らいでいる自分をみて僕が話し相手に飢えていた事に気付いた。
「あ、新世界」
 かすかなヴォリュームでドヴォルザークの『新世界より』が流れている。時計を見ると四時前を差していた。この曲はいつも脳裏に鮮やかな夕暮れを浮かべさせてくれる。
「三時は廻っちゃったけど珈琲でも飲もうか」彼女は僕のほうを向くでもなく言った。耳のほうは柔らかなメロディにすっかりと囚われているようだ。
 少し感傷気味になっていたのかもしれない。ただ人と話すれば楽になれるかと思っただけかもしれない。僕は黙ってうなずいた。

 誰にでもお気に入りのお店はあるもので、彼女を連れてきたこの店もそんな一つだった。
 時代を感じさせるランプシェードがひさしから突き出て、そこに連なる様に杉板に浮かびあがった焼き鏝の屋号は『RAMPO亭』とある。軒先にはポーの「アモンチリャドーの樽」にちなんでいるのだろう、ワイン樽に季節の花が生けられ、見るものの目を楽しませる。
 なんかいいお店、と呟く彼女を先に入らせる。一見さんにはちょっとした仕掛けがあるのだ。案の定、小さな悲鳴が彼女の口から漏れ出た。
 
――全裸の女性が荒縄で天井から吊り下げられ、男に刀で切り上げられている。女は凄惨な表情を浮かべ、首筋や乳房からは鮮血の雫が滴り地面に染みを作っていた――

「……これって」さすがに絶句している。
「『新田新助作「裸女つるし斬りの図」』それのシルクスクリーンだよと、それを補足する様に奥から声が聞こえる。
「こんにちわマスター」カウンター奥ではこの店のマスターが彼女を見てにやりとした。まるでいたずらが成功した子供みたいな表情をしている。
「やあ、いらっしゃい。彼女かい?」
 僕は曖昧な表情で返すと冷珈琲を二つ頼む。そして彼女を窓際の席へと案内する。目が慣れたのか彼女はゆっくりと店内を見回し、げんなりとした表情を浮かべた。壁のあちこちに先ほどと同じようなシルクスクリーンが掛かっている。が、全てが血塗れというわけではなく、注意深く観察すれば乱歩の作品に関したものである事がわかる。黄金仮面に怪人二十面相、黒蜥蜴に人間豹……。
「『ドグラ・マグラ』の表紙みたい」彼女はそう評した。

「人生が理不尽だって思ったことある?」
 口をついて出た言葉は自分でも意外だった。あまり初対面の人間とするような会話じゃないと思う。しかし彼女は笑いもせず僕のほうを見ている。仕方なく僕は続けた。「じゃあ、身近な人間が唐突に死んでしまったことは?」
「それは彼女?」その問いかけは彼女自身の回答ではなくて僕に肯定を与えるための断言であった。訊ねているわけではない、確認をとっているような。
「どうだろう。やっぱり年月というのは人を多からず少なからず侵食するものだってことが分かったってことぐらい。回答になってない?」
 彼女はフムと形の良いあごに手を当てた。「つまり長年の付き合いで『好き』という感情が磨耗したということかな」
「いや、そうじゃない。中学を卒業してから一度も再会してないんだ。僕等は。あの頃と今はもちろん違うし、もし彼女が生きていたら僕等二人にとってそういう選択、つまり恋人とかという選び様は在ったかもしれない。当然その逆もしかり。でも何を言っても今となっては空論だ。回答が彼女の口から聞ける機会は永久に失われたのだから」
 人生は有限だ。限定された可能性の中から取捨選択し、進んでいくものなのだ。そのことはまた、生得的なものや誰かに聞くようなことじゃなくて経験的に学び取っていくものなのだ。誰の所為でもない。どちらかが手を離したのではなく、僕は高奈津さんと違えた道をいき、今になってその結果と向き合っている。そうして初めて気付くこともある。
「幽霊出てくるかも」彼女の言い様はあまりに無邪気で僕は少しむっとした。
「何ならお目に掛かりたいね。生まれてこの方、金縛りも無いんだ」
「目の前にいるかもよ」彼女はコルク地のサボのかかとをカラカラと鳴らし、そして僕の表情を見てハッとしたように舌を出した。「冗談」
「気に障ったんなら謝る。ゴメン」申し訳無いように頭を掻いたが悪戯っぽい目の輝きは変わっていない。
「……何だか」
「……ん?」
 似ている? 僕はふるふると首を振った。いや、そんな事はない。回るように表情が変わる彼女と高奈津さんとに接点などないはずなのに。しかしその時僕の脳裏に浮かんだのは確かに柩の中の彼女の顔だった。
「……彼女のこと話してよ」そんな僕の心情を知っているかのように彼女は僕を促し、それに僕は黙って頷いた。
「高奈津さんは一人で出来る事が好きだったんだ。マラソンとか、水泳とかね。二人でするような、例えばテニスとかそういうのはあまりやらなかった。勝ち負けがあるのは苦手だって。そしてチームプレイのような複数ではなく一人でなにも気にすることなくもくもくと打ち込むのが好きだって言ってた」
「読書とか?」
「もちろん。もっとも中学の頃の高奈津さんは読むだけじゃなくて自分でノートに小説なんかも書いていた。見せてって言ってもなかなか首を縦に振ってくれなかったのを覚えている」
 似ている。似ている。僕は或ることに気付いた。時折見せる彼女の悪戯っぽい目と、高奈津さんが小説について何かを話すときの目がまるで一緒なのだ。覗き込むように心の奥まで全てを見透かす様な。時として物怖じさえ感じてしまうようなその瞳が僕は嫌いではなかった。
「じゃあ、セックスも嫌いなのかな。だって一人じゃ出来ないでしょ」
 不意打ちだ。僕はあやうくテーブルの上の珈琲を肘にぶつけて零すところだった。
「……あのねえ、少なくとも僕の知っている限りじゃ初対面の相手にそんな質問されるのは始めてだよ」
彼女は取り澄ました風もなく、「さっきも言ったけど初対面ってわけじゃないよ、キミが初対面だって言い張るなら別にそれでもいいけど」と言った。
「それに簡単よ、セックスの話することなんて。わけないわ」彼女は耳たぶを親指と人差し指でつまみながらこっちをみた。話を続けなさいといっているようだ。『セックスの話することなんて、わけないわ』僕は小さく息をついた。では高奈津さんに告白するという行為ですら困難であった僕はどうなるのだ。
「彼女がその行為を好きだったかということは知らない。中学生の彼女までしか知らないんだ。少なくとも僕とは寝てないよ。ああ、つまりベッドを共にしたことは」
「じゃあ、あなたは彼女と寝たかったの?」
「そんなこと考えた事無かった」まったくその通りだった。高校を挟んで大学生になって高奈津さんとああいう形で再開するなんて想像すらしていなかった。彼女は取り止めのない妄想の中の性の対象にはなっていなかった。中学のときは違ったけれども。僕に限らず男子中学生の考えることは大体において同じだろう。例えいたにせよ、少なくとも僕は、女の子のことではなく関数計算の数式でマスターベーションした人間の話を聞いたことがない。
「わからない。こういう答えを君が求めているかどうかはわからないけど、その時そういう状況になってみなければ」
「じゃあ考えなさい。わたしとでもあなたはそういう状況になってみて良かったらわたしと寝るの?」
 どうも彼女の質問は直接的で返答に困る事ばかりだったが不思議と厭な感じはしなかった。
「たぶん……きっと」
「きっと?」彼女の声は荒野を行く禿ワシのように興味に満ち溢れている。
「寝ないと思うよ」
「どうして」
「だって、僕は君の事をよく知らないし、第一さっき出会ったばっかりだし、好きだとか嫌いだとかという感情がうまく働かないんだ」
「ふうん、あなたはつまり何事にも公正であろうとするわけね」
 そんな風に割り切るような問題ではないのだ。少なくとも人を好きか嫌いか判断するのに公正であるとか不公正であるとかではなく、そういう事象は総体的には理不尽な行為であると思うのだ。ゆえに唐突に人を好きになったりする。そういう気持ちは自分ではどうしようもない。
「……でもそういうのって良いな」彼女は僕に小さく頷いてみせた。「本音が聞けてよかった」「本音ってどういうこと?」
「もっと、彼女の話をしてよ」問いには応えず彼女が僕をうながす。店の中には耳障りでない程度にバッハの『トッカータとフーガニ短調』が流れている。喫茶店にフーガはミスマッチだと思ったが、そもそも喫茶店の中でかかっている曲に人はあまり注意は引かないものだ。それにあのあまりにも有名な、オルガンによる冒頭の旋律は江戸川乱歩の名を冠したこの店には相応しいのかもしれない。
 僕は促されるままゆっくりと記憶のねじを巻いていった。「彼女は中学の時は競泳用の水着がよく似合っていた」
「競泳用の水着」
「うん、普通、学校の授業内に行われる水泳っていうのはたいていは学校指定の水着を着るもんだと思うけど。彼女は水泳部に入っていて、それでね。競技会とかに出ると周りは皆水着を持っているんだ。学校指定じゃなく、自分のを。だから、学校の部費を使ってそれぞれの水着を買ったんだ」
「どんなだったの」
「紺色の生地だったけど、アクセントとして胸元に鮮やかなコバルトブルーのストライプが入っているんだ。他の女子部員も同じ柄で色違いの水着を着てたけど、彼女が一番しっくりとしていた。まるで彼女用にあつらえたみたいに。だからよく覚えている」
 もう一つ彼女について思い出した。ある種のエピソードはしばしば思い出としてではなく独立した単語、事象として記憶の淵に残るものなのだ。自分でも可笑しいと思うのだが、笑顔であるとか、彼女と何を話したかという事がすぐには浮かんでこなかった。ただ僕の場合、彼女のことを思い浮かべたときに最初に浮かんだのが、例えば水着であるとか檸檬の木だっただけだ。「そして彼女は檸檬の木も似合っていた」
「檸檬の木って?」彼女が怪訝そうに訊ねた。まあそうだろう。大勢を考えるまでもなく、だいたいにおいてどんな服が似合うとか髪形がおしゃれだとかいうのは分かるが普通の人間はあまり檸檬の木に感銘を受ける事はないだろう。もっとも、そもそもが比喩であり本来の意味を指す訳ではない。あのときの彼女の表現が最高に素敵だったのだ。そのことは後の僕の嗜好を左右するほどのもので、考えてみれば彼女を感じられるようなものをただ無意識のうちに身につけていたかっただけかもしれないけれど。
「そう。檸檬の木。その果実畑には酸っぱい檸檬の代わりに銀色に輝く果実が生っているんだ。それは育てる人の人生により味わいが変わる、哲学の味がするんだよ」
 彼女は理解しかねると言った感じで小首を傾げている。親指と人差し指はいまだ耳たぶにあてがわれたままだ。もっとじらしても良かったのだけどそんな行為に何らかの意味を見出す事が出来なかったので僕は答えをそうそうに白状した。
「ほら、これのことだよ」そういって右手の薬指を彼女に突き出した。そこには一輪の指輪が嵌められている。
「指輪のことなの?」
「そう」僕はリングを指から引きぬきその内側を彼女に見せた。
「ここに、小さな木が彫ってあるのが分かると思うけど、レモンツリー。この指輪のブランドネームなんだ。つまり檸檬の木」
「彼女がそういうものに凝っていたとは知らなかったけど、中学卒業後に一度だけ偶然街で出会ったことがあるんだ。久しぶりに会った彼女の人差し指には銀の指輪が輝いていた。それは女の子が着けるような華奢なリングじゃなくてざっくりと大きくカットされた無骨なデザインの指輪だった。例えば西部劇に出てくるカウボーイ・ハットをかぶったならず者達がしていそうなね。見たこと無いけどきっと、彼女はそれも似合っただろう。そのとき『その指輪素敵だね』っていったら微笑みながらその由来を教えてくれたんだ。彼女の感性はそういう点ではすごく大人びていた。十五歳だった僕には毒なくらいだった。『香水なんかと同じよ。他人はシャネルの香水を振りかける。わたしは檸檬を身に纏っているのよ』って」
「素敵ね」彼女は遠くを見つめる様に僕の顔をみつめた。
「彼女のお姉さんが僕の事を知っていて形見分けにと葬儀の後、譲ってくれたんだ」
「そしてあなたはそれを薬指にしている」
「薬指に特別な意味は無いよ。人差し指にするには僕には小さすぎた。しっくりくるのがただ薬指だったってだけだよ」
「誤解しなくても。ただ聞いただけだから」彼女は溶けかけたアイス珈琲の氷をストローでかき混ぜ、僕が渡した指輪を彼女は指輪の具合を確かめる様に注意深く観察し、光にかざしたりしていた。耳に聞こえてくるのはベスト盤でもかけているのだろうか、曲はいつのまにかゴルトベルク変奏曲のアリアに移り変わっていた。チェンバロの音はあたかも秋の陽射しのように和かな調べを奏で、自然と夕闇の空気に織り込まれてゆく。
「あなたって独特のユーモアがあるわよね。普通の人は指輪に哲学を感じたりはしない」彼女はくすくすと笑った。
「別に感傷的になっているわけじゃないよ。ほんとにそう思うんだ。往々にして身に着ける人の人格が指輪には現れる。結婚指輪なんて絶対に嵌めたくない!て思う人もいれば不幸にして結婚指輪を嵌められない気の毒な男性だっている、両の指全部に指輪を嵌めて平気な人もいる。どの指に嵌めるかでもそうだ。女の人の左手薬指に指輪があったら変に勘ぐったりはしないかい?それと同じことなんだ。すなわち指輪には哲学が宿る」僕は大まじめに彼女にそう答えた。
「哲学といったけどあなたはただ嵌らないからといってどの指でも良かったみたいにいったわ」
「その通り、僕には何も無い。哲学と呼べるようなものは何一つとして持ち合わせてはいない。僕はただここにあるだけなんだ」
「エゴ・コギト」彼女は言い難そうに言葉を紡いだ。
「エゴ・コギト・スム」僕は後を継ぎ続けた。
 僕には彼女が何を言いたいのか分かった。
 我思う、我在り。デカルトの有名な言葉だ。今でも存在論史を語る上で外すことの出来ない重要語句の一つに挙げられる。そういえば高奈津さんも教室の陽だまりに机を寄せてはキルケゴールやハイデガーを読んでいた。そういう点では本当に早熟な女の子だったのだ。彼女が生きていれば哲学か心理学を学んだにきっと違いない。
「彼女は死んでしまったかもしれないけど少なくともあなたはここに存在している。そして彼女は見えないけど、あなたは見える。フォアハンデンハイト(目の前にある)」
「……有り難う」彼女は気休めではなく本当にそう思っていっているのだ。ほかにはなにも僕の口から言葉は飛び出てこなかった。そしてまたそうすることが目の前の彼女に対する礼儀なのだろうと思った。
「いいえ、どういたしまして」少し首を傾けそういった彼女の仕草がまるで彼女を思い起こさせて烈しく心を揺さぶられた。気付いたが時折見せる瞳と同じように彼女のさりげない一つ一つの動作が僕の中で高奈津さんを甦らせるのだ。そのことが、既に彼女はいないのだと改めて僕に事実を認識させ、辛くする。僕は高奈津さんを思い出の人なんかにしたくはなかった。今でも隣にいるのが当たり前だったはずなのだ。取り止めのない話をしながら喫茶店で珈琲を飲んでいるはずだったのだ。なのにもう彼女は此処には存在すらしていない。写真を見て追憶を懐かしがるだけなのだ。そしてその死すらいつかは希薄になり終には消えてしまうのだ。もう誰も彼女を思い出さない。そして自分の中からも彼女は薄れてゆくのだろうか……。
 何かが頬を伝った。そんなのは嫌だ。 気付かないうちにいつのまにか僕は涙を流していた。食い違っていた感情の歯車がやっと噛み合わさった様に。僕はその事自体には気付いていたが涙を拭うことなんて考えもつかなかった。
「……」
「……」
 どちらともなく口をつぐみ、二人の間を穏やかな沈黙がテーブルの上を舞い踊っていた。
 考えはまとまりを欠き、まるで風に吹かれて千切れ流れてゆく綿雲のようだった。僕は何かを言わなければと気ばかりが先をいった。彼女に何かを言わなければならない。しかしちょうど良い語句が思いつかなかった。まるで頭の中の国語辞典をそっくり引き抜かれたかのように。それでもゆっくりと何かが心の奥で紡がれやがてはその雫が口唇をついて出た。
「少なくとも僕は完成された人間ではなくて、その事で僕は周りが思う以上に遥かにずっと彼女を求め、そして彼女のことを誰よりも深く愛していた。不完全な僕を補完してくれる彼女を……」
「知ってるわ。誰よりもわたしはそのことを。だからもう忘れなさい」
「……!」
 その声には聞き覚えが有った。それはまさしく過去からの呼び声だった。手に入れようとしても今となってはその大部分が砂丘の砂の様に指の間から流れ落ちてしまったものなのだけど。僕はゆっくり顔を起こし、涙を拭い、彼女の顔をじっくりと見つめた。最初に会った時の顔はもう思い出せなくなっていた。その顔は既に高奈津さんそのものだった。左目の傍にある小さなほくろもぽってりとした下唇もなにもかも。そしてその顔は柩の彼女ではなく、僕等があのまま共に歩んでいればいずれ見ることが出来たであろう屈託の無い微笑みだった。
「わたしもあなたのことを愛していたのよ。あなたが考えるよりもずっと深く、そして長い間」
「……」もっと話したい事があるんだ。君との再会までに君が何処で何をしていたのか僕は何一つ知らないんだ。そして僕の事も聞いてもらいたい。それこそ三年分の月日を埋めるものなら何だって話したいんだ。ねえ、どうして死んでしまったんだ。柩の中の君はあんなにも奇麗だったのに!
 しかし僕は結局何も言えなかった。言いたい事が奔流の如く吹き出てきても提示されるのはちぐはぐな部品ばかり。それは何一つとして明確な像を結ぶことなく、ゆえに口唇をついて出ることはなかった。
「……さよなら、最後に会えて良かった」彼女は僕の頬を両の手のひらで包み込むと優しく口付けをした。それは触れ合うだけのついばむようなキスだったが、金縛りに会ったように僕はまったく動く事が出来ない。
 思えばそれは僕等の最後のスーベニア(記念日)だった。
 彼女は席を立つと立ちあがった僕の横をすり抜けドアから出ていった。彼女が高奈津さんかなんてもうどうでも良かった。しかしもしそうなら、いや、そうではなくとも話の続きをしたかった。今を逃せばもう彼女と会えない。そんな気がしたのだ。
 マスターに顎で会釈をすると彼は『わかった。行ってこい』と目で合図をくれた。僕が半瞬遅れでドアから飛び出すと既に彼女の姿は見当たらなかった。いつのまにかしとしとと雨が降っていた。傘も差さずに飛び出したまま、通りで立ち尽くす僕を行き交う人達が怪訝そうに眺めている。……眺めるなら眺めるがいい。お前達に僕の悲しみが分かると言うのか、僕にとって彼女がどんな存在だったか知っているのか。彼女の替わりは世界中の何処を探しても見つかりはしないのだ。彼女は切れた電球の様に付け替えのきく代替物なんかではなかったのだ。恐らく僕をこの先愛してくれる人は現れるだろう。その愛は僕の胸の空漠を満たすものではなく、唯一の癒しは、しかしもう彼女は手に入らない……。
 どれくらい立ち尽くしていたのだろう。現れたときと同じく彼女はまた唐突に消えてしまった。失意の念で僕達が座っていたシートに戻ってきたときに僕は在る事実を知り、そして悟った。彼女は指輪さえ持っていってしまったのだ。唯一僕と彼女を結び付けていた接点。そのことは彼女と言う存在をそれこそ永遠という時の中に完全に損なってしまったのだと気付かせるに十分な出来事だった。もしこうなると知っていたら彼女を離しはしなかったのに。しかし毀れた水が元には戻らない。過ぎ去った時間を巻き戻す事は、絵空事以上に誰にも出来ないのだ。
 哲学の味を示唆してくれる檸檬の木は損なわれ、後には氷の溶けきった珈琲のグラスが二つと空漠を抱く胸と中学生の時の幾つかの思い出があるだけだった。そしてそれらは走馬灯のようにぐるぐると降り注ぐ雨の中をいつまでも回りつづけ、最後に僕はこの恋が失われた十八歳の輪の中に取り込まれたと知る。独りで立ち上がろうにもどうしようもなく、降り止まぬ雨はその日中続いた。
 
 そして彼女を遺したまま、秋の終わりに僕は十九になる。

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コメント

さすがー。言い足りない部分があったというのはそこでしたか^_^;
もちろん春樹さんです。村上春樹さんの小説は、ハッピーではないどこか報われの無さが残る結末が多いのですが、そういった部分は「雨と檸檬」にも織り交ぜられたかなと思っています。

ちょっと曲がりくねった、カーブ>
仰るとおり、ずいぶんと意識して曲がりくねらせた感はあります。「ある者にとっては難解~ねちっこい振り回され方~嫌いではないけど、慣れるのに時間を必要とする読者」
まったくご指摘のとおりで、友人からも、「難解すぎて感想を頂けるのは諦めなさい」って言われてたくらいだし(ノд`)
こうして、信天翁さんや才源さんから感想を頂戴できたのは、望外のことだったので、余計に嬉しいのでした。
時には辛辣>
いえいえそんなことは。十分に糧にさせていただいてます。褒められるのは嬉しいですが、それでは十分にコミュニケート出来ているとは言えませんし。
期待されて書くというのは、とかく楽しいものだし、どんな変化球投げようかと心が躍ります。……たまには直球も投げてみたいですけど(笑)

投稿: 甲斐ミサキ(to信天翁さん) | 2005.07.14 21:13

実は春樹について触れたかったのですよ。
でも、この作品はそのようであってそのようでない。
甲斐さんのものになっていますよ。ちょっと曲がりくねった、カーブね、そこが良くも悪くも春樹とは違っていて、ある者にとっては難解というか、ねちっこい振り回され方をする。嫌いではないけど、慣れるのに時間を必要とする読者もいるにはいるね、多分。
勝手なこと言っているけど、可能性を秘めた“大器”だから、時には辛辣になったりする。
期待しております。

投稿: 信天翁 | 2005.07.14 16:10

とても染み入る感想、ありがとうございました。
深く読み込んでくださっているので余談を。
小説を完成させたタイムテーブルを紹介すると信天翁さんは面食らってしまうかもしれませんが、「雨と檸檬」。実は「水蜜桃」よりも古い作品です^_^;
にもかかわらず、今書ける最高のものでもあります。

短編書きならではの特権といいますか、毎回文体で実験を行っていて、この小説文体は某作家さんの影響が色濃く出ています。読書家の信天翁さんには余裕で看破されたかもしれません(龍じゃないほうの人です)。
無から小説を構築するのと、何か思いいれがあって書き始めるのとでは文章に込める力の程度も異なってきますし、この時はまさに後者でした。そこらへん、後の小説と比較した結果、信天翁さんに見破られた気がします。

切ない思いの虜にならしめる>
ステキな言葉をありがとうございます。「僕」に感情移入して思いのまま書いたことがいい結果を生んだようです。

甲斐流>
この作風、自身も気に入っているのですが、やりすぎると嫌味になるのではないかって思ったりもします。難しいですね。

性分的には、ドヴォルザークよりは『新田新助作「裸女つるし斬りの図」』な甲斐でしたm(__)m

投稿: 甲斐ミサキ(to信天翁さん) | 2005.07.14 10:54

この小説、いいです。
僕と高奈津の関係がストレートに読み手に伝わるというか、切ない思いの虜にならしめるというのは並大抵ではない。生意気なようだけど、甲斐さん、格段に佳くなっています。なにかあったのかな。。。(^^
冒頭部分でちょっと面喰らい、いつもの甲斐流だなと躓きかけたけど、読み進む内にどんどん引き込まれて行きました。どちらかというとこう言う作風のものが個人的には好きです。
高奈津については、わたくしにはわたくし的な解釈がありますが、それは内緒です。
この作品については、まだ言い足りないところもあるような気もしますが、甲斐さんがある意味脱皮し、ドボルザークと『新田新助作「裸女つるし斬りの図」』をクロスオーバーさせつつ、進化しつづけていることはなにより嬉しい。

投稿: 信天翁 | 2005.07.14 09:40

さっそくの感想ありがとうございます(^^)

檸檬>実際にも「レモンツリー」ってブランドネームの指輪屋さんはあり御用達だったりします。

彼女=高奈津さん という図式が"僕"の中にはありますが、実際のところはどうなんでしょう……。
幽霊なのかもしれないし、あるいは別人が高奈津さんを装い、自分の方へ振り向かせるための手段かもしれない。
会話をしている彼女の名について、主人公が問う場面があり、さらりとかわされてしまうわけですが、ここらは読者さんの想像にお任せするための伏線張りなのでした。
告白できなかった主人公への恨み言>
こういう深読みは嬉しかったです。というか、才源さんのコメントで彼女の心理状態が少し見えた気がします^_^;

他の小説の公開は……やっぱり未定。書き上げるのが先か、他の小説に手をつけるのが先か。デッドオアアライブな感じです(ヤバー)

投稿: 甲斐ミサキ(to才源さん) | 2005.07.08 12:13

お久しぶりです。小説読ませていただきました。
檸檬という文字から、梶井基次郎氏の小説を連想していたのですが、成る程そういう檸檬なのかと感心しました。

高奈津さんの指輪を持っていってしまった理由を考えると切ないですね。愛しているからこその厳しさであり、優しさ。
でも、少し意地悪な優しさだなとも思ってしまいます。姿を見せなければ、主人公もゆっくりと想いを消化させることが出来たのに、その機会を取り去っちゃったわけですから。告白できなかった主人公への恨み言代わりであり、彼女自身の未練なのかな。検討違いなこと言ってたら、申し訳ないです。
考え出すと深みに嵌っちゃいそうな気もするので、この辺で(考え込むの苦手なのです(苦笑)
他にも小説を用意しているとのことなので、楽しみにしています。頑張って下さいね♪

投稿: 才源 | 2005.07.07 18:44

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